case

診療実績

2023.10.31
画像診断
#9 椎間板ヘルニア(胸椎前方)【画像診断】

<症例> ラブラドールレトリバー、8歳、去勢雄、33kg

 

昨日の朝方からいつもより元気がなく、散歩に行きたがらない様子だったが、午後になって急に後肢が動かなくなってしまって、前肢だけで動くようになったとのことで来院。
神経学的検査を行ったところ、両後肢の麻痺が認められました。
レントゲン上は明らかな異常は認められず、前肢にも明らかな神経学的異常は認められませんでした。詳細な神経学的検査より、胸腰髄の脊髄疾患(特にT3〜L3)が疑われ、精査のために胸腰部MRI検査を実施しました。

 

MRI検査を実施したところ、第5胸椎及び第6胸椎の椎間(T5-6)において、椎間板ヘルニアが認められました。脊髄が左右腹側の周囲から椎間板物質によって圧排され、変形しています。その他、胸腰部において、麻痺の症状を呈するような病変は認められず、本症例はT5-6の椎間板ヘルニアと診断されました。

 

【MRI、胸部矢状断像、T2強調画像】
【MRI、胸部矢状断像、T2強調画像】
【MRI、C5-6横断像、T2強調画像】
【MRI、C5-6横断像、T2強調画像】

 

【MRI、脊髄矢状断像、T2強調画像(例)】
【MRI、脊髄矢状断像、T2強調画像(例)】

 

犬や猫の脊椎の数は、頚椎(C)が7個、胸椎(T)が13個、腰椎(L)が7個、仙椎(S)は3個が癒合し、1つの仙骨となります。そしてその後ろに尾椎が続くような形態をとります。一般的に、T10-11より頭側胸椎においては胸椎に付着している肋骨と肋骨頭間靱帯が胸椎の運動を抑制しているため、T10-11より頭側の胸椎での椎間板ヘルニアは稀とは言われており、関節の可動域が大きくなる(椎間板に負担のかかる)、T12-13、T13-L1で椎間板ヘルニアが発症しやすいことがわかっています。しかし、大型犬、特にジャーマンシェパードでは本症例のように、T10-11より頭側の胸椎においても認められることがあります。

 

*当院では、高崎市の「MGL付属高度動物医療センター」にてMRI検査を実施しております。
当院からの指示があった場合を除き、まずは富岡総合医療センターをご受診下さい。