case

診療実績

TOP > #46 浸潤性脂肪腫による坐骨神経圧迫【画像診断】
2024.12.16
画像診断
#46 浸潤性脂肪腫による坐骨神経圧迫【画像診断】

<症例> 大型雑種、10歳

 

数ヶ月前から徐々に右後肢に力が入りにくくなってきている様子があるとのことで来院されました。
神経学的検査を行ったところ、右後肢のみに不全麻痺が認められ、左後肢には神経学的な異常は認められませんでした。
レントゲン検査では骨に異常は認められませんでしたが、右大腿部に筋間脂肪腫を疑う所見を認めました。脊髄/神経の精査のために腰部MRI検査を実施しました。


MRI検査を実施したところ、矢状断像ではL7-S1に椎間板の変性および軽度椎間板突出を認めましたが、脊髄/馬尾神経への圧迫を疑う所見や、脊髄腫瘍などを疑うような所見は認められませんでした。横断像でさらに脊髄から出ていく神経を細かく見ていくと、右の大腿部から腰部にかけて、筋肉内に脂肪腫を認め(水色矢印)、その脂肪腫が坐骨神経が走行する領域まで浸潤することにより、坐骨神経は背側から圧排されていました。この圧排により、右の坐骨神経はやや腫脹しており、圧排による炎症性の腫大が考えられました。

 

【MRI、矢状断像、T2強調画像】
【MRI、矢状断像、T2強調画像】

 

【MRI、病変部の横断像、T2強調画像】
【MRI、病変部の横断像、T2強調画像】
【MRI、横断像、T2強調画像】
【MRI、横断像、T2強調画像】

 

なお、脂肪はMRIではT2強調画像、T1強調画像ともに高信号(白く)見えてきます。液体はT1強調画像で低信号(黒く)見えるために、他の画像等と組み合わせて病変部位が脂肪なのか液体なのかなど、見えているものがどういったものなのか、ある程度画像から判断することが可能です。ちなみにCTでは脂肪はCT値*と呼ばれる数値では-180~-100HU程度であり、黒っぽく見えてきます。
(*CT値とは「水を0」「空気を-1000」とした便宜的な数値)
以下の画像の黄緑矢頭で囲われた部分は、頚部の脂肪腫のMRIです。T2強調画像のみでは、同部位が液体なのか脂肪なのか判断できませんが、T1強調画像でも同様に高信号を呈しているために脂肪であると判断できます。

 

【MRI、横断像、T2強調画像】
【MRI、横断像、T2強調画像】
【MRI、横断像、T1強調画像】
【MRI、横断像、T1強調画像】

 

 

 

※当院では、高崎市の「MGL付属高度動物医療センター」にてMRI検査を実施しております。
当院からの指示があった場合を除き、まずは富岡総合医療センターをご受診下さい。