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2024.07.26
画像診断
#44 脳微小出血【画像診断】

<症例> シーズー、13歳、去勢雄

 

2回ほどけいれん発作が認められたとのことで来院されました。
発作時以外は一般状態に問題なく、神経学的検査上も異常は認められませんでした。
高齢のため、脳腫瘍の可能性もあるとして、精査のため頭部MRI検査を実施しました。

 

MRI検査を実施したところ、左側の側頭葉にT2強調画像でごく微小な低信号域を認めました。この領域はT2*強調画像/SWIと呼ばれる撮像法で磁化率アーチファクトを伴っていました。このことから微小出血が考えられました。

 

 

【MRI、横断像、T2強調画像】
【MRI、横断像、T2強調画像】
【MRI、横断像、T2*強調画像】
【MRI、横断像、T2*強調画像】
【MRI、横断像、SWI】
【MRI、横断像、SWI】

 

 

その他にもいくつか微小出血を疑う所見が認められました。以下の画像は頭頂葉で見られた微小出血ですが、T2強調画像では分からず、T2*強調画像で僅かに磁化率アーチファクトを伴っていました。SWIではより感度が高いため、よりはっきりと磁化率アーチファクトを伴っていたことから微小出血をより明瞭に検出することができました。

 

 

【MRI、横断像、T2強調画像】
【MRI、横断像、T2強調画像】
【MRI、横断像、T2*強調画像】
【MRI、横断像、T2*強調画像】
【MRI、横断像、SWI】
【MRI、横断像、SWI】

 

 

<脳微小出血 Cerebral microbleeds:CMBs>

脳微小出血は破綻した毛細血管から僅かな赤血球が血管外へ流出しへモジデリンとして蓄積した状態のことで、MRI上ではT2*強調画像やSWIで円形・点状の低信号域として検出されます。人によくみられ、本症例のように高齢の犬でもしばしば認められます。

 

人では脳微小出血は高血圧性細動脈症(Hypertensive arteriopathy:HA)や脳アミロイドアンギオパチー(Cerebral amyloid angiopathy:CAA)が主な原因として言われており、高血圧性細動脈症は脳血管障害、脳アミロイドアンギオパチーはアルツハイマー病との関連があり、加齢と共に一般的に見られることがありますが、人では脳梗塞/脳出血発症のリスクの危険因子としても考えられています。

 

本症例では脳微小出血は偶発所見と考えられ、てんかん発作は原因不明のてんかんと考えられました。

 

 

【参考文献】

Yakushiji Y, Hara H. [Cerebral microbleeds: clinical features and management]. Rinsho Shinkeigaku. 2012;52(11):1106-9. Japanese. doi: 10.5692/clinicalneurol.52.1106. PMID: 23196531.

 

Kerwin SC, Levine JM, Budke CM, Griffin JF Th, Boudreau CE. Putative Cerebral Microbleeds in Dogs Undergoing Magnetic Resonance Imaging of the Head: A Retrospective Study of Demographics, Clinical Associations, and Relationship to Case Outcome. J Vet Intern Med. 2017 Jul;31(4):1140-1148. doi: 10.1111/jvim.14730. Epub 2017 May 27. PMID: 28556471; PMCID: PMC5508348.

 

Fulkerson CV, Young BD, Jackson ND, Porter B, Levine JM. MRI characteristics of cerebral microbleeds in four dogs. Vet Radiol Ultrasound. 2012 Jul-Aug;53(4):389-93. doi: 10.1111/j.1740-8261.2011.01910.x. Epub 2012 Jan 11. PMID: 22235951.

 

Mai, Wilfried. Diagnostic MRI in Dogs and Cats. 1st ed. CRC Press, 2018. Web. 14 Oct. 2022.

 

 

※当院では、高崎市の「MGL付属高度動物医療センター」にてMRI検査を実施しております。
当院からの指示があった場合を除き、まずは富岡総合医療センターをご受診下さい。