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2024.03.25
画像診断
#42 脳炎(MUO)【画像診断】

<症例> トイプードル、2歳、避妊雌

 

最近、抱っこや階段を嫌がるようになり、痛み止めで一度改善したが、また痛みが悪化し、元気食欲もなくなってきたということで来院されました。レントゲンでは大きな異常は認められず、精査のために頭頸部MRI検査を実施しました。

 

MRI検査を実施したところ、両側の頭頂葉、側頭葉、後頭葉(右>左)の白質領域に多発性に非対称で境界不明瞭なT2強調画像/FLAIR画像で高信号、T1強調画像で等〜やや低信号、造影剤により淡く増強される病変が認められ、年齢から最も炎症が疑われました。また、頚髄背側にも淡く増強される領域を認め、同様に炎症が疑われました。大槽より脳脊髄液の採取を実施し、感染性は検査で除外されたことから、起源不明髄膜脳脊髄炎(MUO)と診断されました。

 

【MRI、横断像、T2強調画像】
【MRI、横断像、T2強調画像】
【MRI、矢状断像、造影T1強調画像】
【MRI、横断像、造影T1強調画像】

 

【MRI、横断像、造影T1強調画像】
【MRI、横断像、造影T1強調画像】
【MRI、頚髄横断像、造影T1強調画像】
【MRI、頚髄横断像、造影T1強調画像】

 

 

起源不明髄膜脳脊髄炎(Meningoencephalomyelitis of unknown origin:MUO)は、#11脊髄炎【画像診断】でもご紹介しましたが、壊死性髄膜脳炎(NME)、壊死性白質脳炎(NLE)、肉芽腫性髄膜脳脊髄炎(GME)の3つの疾患の総称です。本症例は主に大脳白質に多発性に見られ、脊髄にも病変を認めたことから肉芽腫性髄膜脳脊髄炎(GME)の可能性が最も高いと考えられますが、以前もご紹介したように近年は上記3疾患をまとめて起源不明髄膜脳脊髄炎(MUO)と呼ぶことが多くなりました。名前の通り、原因や発症機序がよくわかっていませんが、免疫抑制治療に対する反応がいいことから免疫介在性疾患であろうと言われています。これらは非感染性の脳炎であり、その他非感染性脳炎には好酸球性髄膜炎、ステロイド反応性髄膜炎動脈炎などがあります。一般的にチワワやヨークシャーテリア、マルチーズ、トイプードルなどの小型犬に見られることが多いですが、大型犬に見られることも稀にあります。症状は、炎症が起こっている脳の場所によって異なるため、てんかん発作、運動失調、意識レベルの低下、視力障害、不全麻痺など様々です。

 

【参考文献】

Granger N, Smith PM, Jeffery ND. Clinical findings and treatment of non-infectious meningoencephalomyelitis in dogs: a systematic review of 457 published cases from 1962 to 2008. Vet J. 2010 Jun;184(3):290-7. doi: 10.1016/j.tvjl.2009.03.031. Epub 2009 May 1. PMID: 19410487.

 

 

※当院では、高崎市の「MGL付属高度動物医療センター」にてMRI検査を実施しております。
当院からの指示があった場合を除き、まずは富岡総合医療センターをご受診下さい。