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診療実績

2024.03.04
画像診断
#40 脊椎腫瘍【画像診断】

<症例> バーニーズマウンテンドッグ、7歳、避妊雌

 

数週間前くらいからなんとなく後肢に力が入りにくいような様子があったが、ここ2-3日で急に後肢が動かなくなってしまったとのことで来院されました。
神経学的検査を行ったところ、両後肢の麻痺が認められ、レントゲン検査で胸椎の異常が疑われたため、精査のためMRI検査を実施しました。

 

MRI検査を実施したところ、第10胸椎の椎弓や棘突起は不整に腫大しながら腫瘤を形成しており、T2強調画像でやや低〜等信号(一部やや高信号を呈し、不均一な混合信号)、T1強調画像でやや低〜等信号を呈し、不均一かつ強い増強効果が認められました(黄緑矢頭)。この腫瘤は脊柱管内にも大きく進展しており、脊髄は背側から重度に圧排されており、最も圧排されている領域では正常な脊髄は僅かしか確認できませんでした。これら所見から脊髄硬膜外腫瘍が考えられ、骨肉腫や軟骨肉腫などの脊椎腫瘍が最も疑われました。

 

【MRI、矢状断像、T2強調画像】
【MRI、矢状断像、T2強調画像】
【MRI、病変部の横断像、T2強調画像】
【MRI、病変部の横断像、T2強調画像】

 

【MRI、病変部の横断像、T1強調画像】
【MRI、病変部の横断像、T1強調画像】
【MRI、病変部の横断像、脂肪抑制造影T1強調画像】
【MRI、病変部の横断像、脂肪抑制造影T1強調画像】

 

 

<脊髄硬膜外腫瘍>
脊髄腫瘍の中でも、脊椎自体の腫瘍や脊椎周囲の軟部組織の腫瘍により、硬膜の外側から脊髄を圧迫するタイプのもので(他に硬膜内-髄外腫瘍、髄内腫瘍)、脊髄腫瘍の中で最も多く見られるタイプの腫瘍です。脊髄硬膜外腫瘍には、脊椎原発性腫瘍(骨肉腫や軟骨肉腫、血管肉腫、線維肉腫)、また脊椎の近くの軟部組織から発生する原発腫瘍(脂肪肉腫、粘液肉腫、肥満細胞腫など)や転移性腫瘍(前立腺癌や移行上皮癌など)、独立円形細胞腫瘍(リンパ腫、形質細胞腫、多発性骨髄腫など)、末梢神経鞘腫などが見られます。また、まれに骨腫、軟骨腫、脂肪腫などの良性腫瘍が発生することもあります。

 

【硬膜外腫瘍・横断像のイメージ】
【硬膜外腫瘍・横断像のイメージ】
【硬膜外腫瘍・矢状断像のイメージ】
【硬膜外腫瘍・矢状断像のイメージ】

 

 

【参考文献】

Bagley RS. Spinal neoplasms in small animals. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2010 Sep;40(5):915-27. doi: 10.1016/j.cvsm.2010.05.010. PMID: 20732598.

 

Magnetic Resonance Imaging Features of Extradural Spinal Neoplasia in 60 Dogs and Seven Cats. Auger M, Hecht S, Springer CM. Front Vet Sci. 2021;7:610490. Published 2021 Jan 7. doi:10.3389/fvets.2020.610490

 

 

※当院では、高崎市の「MGL付属高度動物医療センター」にてMRI検査を実施しております。
当院からの指示があった場合を除き、まずは富岡総合医療センターをご受診下さい。