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診療実績

2024.02.12
画像診断
#37 脊髄梗塞(猫)【画像診断】

<症例> 雑種猫、17歳、去勢雄

 

昨夜から突然体に力が入らず立てなくなったとのことで来院されました。
神経学的検査を行ったところ、運動失調及び四肢の不全麻痺が認められました。意識レベルはしっかりしており、脳神経学的検査では異常は認められませんでしたが、元々慢性腎臓病及び高血圧がありました。
レントゲン検査でも異常は認められず、精査のためMRI検査を実施しました。

 

MRI検査を実施したところ、C2椎体レベル(第2頚椎レベル)の脊髄腹側域にT2強調画像で高信号を呈する病変が認められました(STIR画像だとより明瞭に描出されています)。この病変は造影剤による増強は認められず、横断像において、脊髄腹側域で楔状を呈していました。急性発症という経過も合わせ、C2レベル腹側脊髄動脈の領域における脊髄梗塞と診断されました。

 

 

【MRI、矢状断像、T2強調画像】
【MRI、矢状断像、T2強調画像】
【MRI、矢状断像、STIR画像】
【MRI、矢状断像、STIR画像】

 

【MRI、病変部の横断像、T2強調画像】
【MRI、病変部の横断像、T2強調画像】
【MRI、病変部の横断像、STIR画像】
【MRI、病変部の横断像、STIR画像】

 

 

<猫の脊髄梗塞(虚血性脊髄症 ischaemic myelopathy:IM)>

犬の脊髄梗塞をご紹介させて頂いた際に、犬の脊髄梗塞で最も一般的な原因は線維軟骨塞栓症(FCE)が最も一般的とご紹介させていただきました。猫でも線維軟骨塞栓症は起こりますが、猫は椎間板ヘルニアの発症は犬に比べとても少なく、本症例のように内科疾患を併発している高齢の猫で脊髄梗塞を発症した際には血栓の塞栓が考えられます。8頭の頚部虚血性脊髄症(脊髄梗塞)と診断された高齢猫の報告では、8頭中4頭がC2領域、残り4頭がC3領域で発症しており、これら猫全頭に高血圧、肥大型心筋症、慢性腎臓病が見られたことから、腹側脊髄動脈の血栓塞栓が考えられました。C2及びC3領域での発症が多いのは腹側脊髄動脈がC2レベルで最も狭くなっていることが考えられています。また、線維軟骨塞栓症は再発することは少ないですが、内科疾患を併発している高齢猫では再発が多いとも報告されています。

 

【参考文献】

Simpson KM, De Risio L, Theobald A, Garosi L, Lowrie M. Feline ischaemic myelopathy with a predilection for the cranial cervical spinal cord in older cats. J Feline Med Surg. 2014 Dec;16(12):1001-6. doi: 10.1177/1098612X14522050. Epub 2014 Feb 7. PMID: 24509256.

 

 

※当院では、高崎市の「MGL付属高度動物医療センター」にてMRI検査を実施しております。
当院からの指示があった場合を除き、まずは富岡総合医療センターをご受診下さい。