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2023.12.14
画像診断
#32 脊髄くも膜憩室(胸腰部)【画像診断】

<症例> 中型雑種、10歳、未去勢雄

 

数週間前から後肢に力が入りにくくなり、徐々に悪化してきたとのことで来院されました。
神経学的検査を行ったところ、両後肢の不全麻痺が認められました。
レントゲン検査では異常は認められず、精査のため胸腰部MRI検査を実施しました。

 

MRI検査を実施したところ、T11椎体の背側の脳脊髄液のラインに異常を認め、脳脊髄液と思われる液体が腹側に膨隆することによって脊髄を背側から圧排しており、脊髄くも膜憩室の診断となりました。

 

 

【MRI、矢状断像、T2強調画像】
【MRI、矢状断像、T2強調画像】
【MRI、矢状断像、MRミエログラフィー】
【MRI、矢状断像、MRミエログラフィー】

 

【MRI、矢状断像、MRミエログラフィー拡大像】
【MRI、矢状断像、MRミエログラフィー拡大像】
【MRI、病変部横断像、T2強調画像】
【MRI、病変部横断像、T2強調画像】

 

 

脊髄くも膜憩室は形態が比較的特徴的であり、特にCT/レントゲン脊髄造影で涙滴状(tear drop sign)を呈するとも言われます。また、脊髄くも膜憩室の約83~90%は脊髄の背側で発生し、6.4~8%は腹側(その他は外側または周囲)で発生すると言われており、実際にほとんどの症例で背側で見られます。信号強度は基本的には脳脊髄液(すなわち液体)とほぼ同等のT2強調画像で高信号、T1強調画像で低信号(〜等信号)です。本症例でもT2強調画像の矢状断像ではわかりにくいですが、MRミエログラフィーで憩室が比較的はっきりと見えており、かつ腹側の脳脊髄液のラインが途絶えていることにより、背側から脊髄が圧迫されていることも容易に認識できます。実際に、この撮像法により、T2強調画像のみの診断より、MRミエログラフィーを併用した場合には脊髄くも膜憩室の同定が2倍以上増加し、脊髄くも膜憩室の見逃しが減ることがわかっています。

 

MRミエログラフィーの撮像時間は比較的短いため、当施設では脊髄の撮像の際にはルーチンでMRミエログラフィーを撮像しております。そのため、脊髄くも膜憩室といった見逃されやすい疾患(特に中齢以上で他の脊髄疾患が併発している場合)も当院では診断可能となっています。

 

 

 

※当院では、高崎市の「MGL付属高度動物医療センター」にてMRI検査を実施しております。
当院からの指示があった場合を除き、まずは富岡総合医療センターをご受診下さい。