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診療実績

2023.11.27
画像診断
#25 特発性てんかん(猫)【画像診断】

<症例> ノルウェージャン・フォレスト・キャット、4歳、去勢雄

 

先月初めててんかん発作を起こし、本日2回もてんかん発作を起こしたとのことで来院されました。
神経学的検査を行ったところ、明らかな異常は認められませんでした。その他、血液検査などでも異常は認められず、頭部の精査のためMRI検査を実施しました。

 

MRI検査を実施したところ、脳に発作を起こすような器質的な異常は認められませんでした。造影後の画像においても、髄膜炎を疑うような異常な髄膜の増強も認められませんでした。MRI検査後、脳脊髄液の採取も実施しましたが、特に異常は認められなかったため、特発性てんかんの疑いという診断結果(除外診断)となりました。

 

【MRI、矢状断像、T2強調画像】
【MRI、矢状断像、T2強調画像】
【MRI、矢状断像、T2強調画像】
【MRI、矢状断像、T2強調画像】

 

【MRI、横断像、T2強調画像】
【MRI、横断像、T2強調画像】
【MRI、横断像、造影T1強調画像】
【MRI、横断像、造影T1強調画像】

 

てんかん発作の原因は特発性てんかん、構造的てんかん、原因不明のてんかんの大きく3つに分けられます(その他、発作の原因が脳以外にある反応性発作:低血糖など)。構造的てんかんは脳腫瘍や脳炎、脳の奇形、脳梗塞など脳にMRIや脳脊髄液検査で異常が認められるもので、原因不明のてんかんは、特発性てんかんの定義からは外れるがMRIや脳脊髄液検査で異常が認められないものを言います。
特発性てんかんは犬で発症するイメージが強いかと思いますが猫でも発症します。しかし犬と比べると少なく、猫では犬より構造的てんかんの割合の方が高いと言われています。若齢であれば奇形や外傷など、高齢であれば脳腫瘍が多く見られますが、猫でより多く見られるリンパ腫は若くても発生する腫瘍です。そのため、発作を繰り返す場合にはMRI検査をお勧めいたします。

 

ちなみに、猫と犬の脳の画像を比べてみると、脳の形が少し違うことがわかるかと思います。構造的に大きな違いはないですが、わかりやすい違いとしては横断像で見た時に側脳室が猫だとかなり細いですが、犬だと比較的しっかりと見えます。また、下にラブラドール・レトリーバーとフレンチブルドッグの脳のMR画像を並べましたが、頭の形が違うことによって、脳の形も異なることがわかるかと思います。猫もエキゾチック・ショートヘアなどの短頭種は脳の形が異なります。

 

 

 

【参考文献】

Schriefl S, Steinberg TA, Matiasek K, Ossig A, Fenske N, Fischer A. Etiologic classification of seizures, signalment, clinical signs, and outcome in cats with seizure disorders: 91 cases (2000-2004). J Am Vet Med Assoc. 2008 Nov 15;233(10):1591-7. doi: 10.2460/javma.233.10.1591. PMID: 19014293.

 

De Risio, L., Bhatti, S., Muñana, K. et al. International veterinary epilepsy task force consensus proposal: diagnostic approach to epilepsy in dogs. BMC Vet Res 11, 148 (2015). https://doi.org/10.1186/s12917-015-0462-1

 

 

※当院では、高崎市の「MGL付属高度動物医療センター」にてMRI検査を実施しております。当院からの指示があった場合を除き、まずは富岡総合医療センターをご受診下さい。