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診療実績

2023.11.24
画像診断
#24 胸腰部脊髄梗塞(線維軟骨塞栓症)【画像診断】

<症例> 小型雑種、7歳、避妊雌

 

突然体の左側に力が入りにくくなったとのことで来院されました。
神経学的検査を行ったところ、左後肢の不全麻痺が認められ、胸腰部の脊髄疾患が最も疑われ、精査のためMRI検査を実施しました。

 

MRI検査を実施したところ、T12(第12胸椎)からL2(第2腰椎)のレベルの脊髄にT2強調画像で高信号(白い)を呈する所見が認められました(水色矢頭)。横断像で見てみると、特にT13〜L2レベルでは左背側に寄っており、楔状を呈しているようにも見られました。また、T13-L1の椎間板に変性が認められました*。これら所見及び経過より、T13-L1の椎間板物質による線維軟骨塞栓症に伴う脊髄梗塞の可能性が最も考えられました。

 

 

【MRI、胸腰部矢状断像、T2強調画像】
【MRI、胸腰部矢状断像、T2強調画像】
【MRI、胸腰部矢状断像、STIR画像】
【MRI、胸腰部矢状断像、STIR画像】
【MRI、T13-L1横断像、T2強調画像】
【MRI、T13-L1横断像、T2強調画像】

 

 

#8脊髄梗塞(線維軟骨塞栓症:FCE)【画像診断】でご紹介した症例は頸髄(C5〜C7)での発症でしたが、線維軟骨塞栓症は本症例のように胸腰髄でも同様に発症します。犬では様々な犬種の若齢〜中齢に多く見られますが、小型犬では特にミニチュア・シュナウザーに多いと言われています。線維軟骨塞栓症は猫にも発症し、猫では犬と比較すると中齢〜高齢で見られることが多く、頸髄でより頻繁に起こることが報告されています。(線維軟骨塞栓症(FCE)について、詳しくは#8脊髄梗塞(線維軟骨塞栓症:FCE)【画像診断】をご参照下さい。)

 

*椎間板の変性所見は脊髄領域のMRI画像診断において重要な所見の一つとなります。レントゲンやCTでは椎間板の確認は難しいですが、MRI(特にT2強調画像)では椎間板を明瞭に描出することが可能です。椎間板の変性とは椎間板の水分とプロテオグリカンの減少を伴うことをいい、MR画像で簡単に表現するとT2強調画像で高信号(白)→低信号(黒)になることです。下の画像は1→5にかけて椎間板変性の遷移のイメージ画像になります。

 

 

【参考文献】
De Risio L. A Review of Fibrocartilaginous Embolic Myelopathy and Different Types of Peracute Non-Compressive Intervertebral Disk Extrusions in Dogs and Cats. Front Vet Sci. 2015 Aug 18;2:24. doi: 10.3389/fvets.2015.00024. PMID: 26664953; PMCID: PMC4672181.

 

da Costa RC, De Decker S, Lewis MJ, Volk H; Canine Spinal Cord Injury Consortium (CANSORT-SCI). Diagnostic Imaging in Intervertebral Disc Disease. Front Vet Sci. 2020 Oct 22;7:588338. doi: 10.3389/fvets.2020.588338. PMID: 33195623; PMCID: PMC7642913.

 

 

※当院では、高崎市の「MGL付属高度動物医療センター」にてMRI検査を実施しております。当院からの指示があった場合を除き、まずは富岡総合医療センターをご受診下さい。