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診療実績

2023.11.22
画像診断
#23 椎間板ヘルニア(猫)【画像診断】

<症例> 雑種猫、14歳、去勢雄

 

昨日、帰宅したら両後肢を引きずっていたとのことで来院されました。
神経学的検査を行ったところ、両後肢の麻痺が認められ、左後肢に比べると、右後肢の麻痺がより強く見られました。
レントゲン検査では明らかな異常は認められず、胸腰髄の脊髄疾患が疑われ、精査のためにMRI検査を実施しました。

 

MRI検査を実施したところ、椎間板の変性所見(T2強調画像で低信号:黒い)が多発性に認められ、第12胸椎と第13胸椎(T12-13)、第13胸椎と第1腰椎(T13-L1)、第1腰椎と第2腰椎(L1-2)の3箇所の椎間において脊髄圧迫所見が認められ、椎間板ヘルニアが疑われました。T12-13及びL1-2の脊髄への圧迫の程度はごく軽度であり、麻痺の症状を出すようなレベルのものではありませんでした。しかし、T13-L1では、右腹側から脊髄が中程度に圧迫されており、圧迫物質には造影剤による増強効果も認められたため、T13-L1の椎間板ヘルニアが今回の麻痺の症状の責任病変と考えられました。

 

【MRI、矢状断像、胸腰部】
【MRI、矢状断像、胸腰部】
【MRI、T13-L1横断像、T2強調画像】
【MRI、T13-L1横断像、T2強調画像】

 

【MRI、T13-L1横断像、T1強調画像】
【MRI、T13-L1横断像、T1強調画像】
【MRI、T13-L1横断像、造影T1強調画像】
【MRI、T13-L1横断像、造影T1強調画像】

 

椎間板ヘルニアと言えば犬で発症するイメージですが、稀ではありますが猫でも発症します。犬、特に小型犬では尾側胸椎や胸腰椎(T12-13,T13-L1)での発症が多く、本症例もT12〜L2椎間で発症していますが、一般的に猫では腰椎の椎間板ヘルニアが多いと報告されています。その他、原因は定かではありませんが、ブリティッシュショートヘアとペルシャ猫に胸腰部椎間板ヘルニアが他の猫に比べて有意に多かったという報告などもあります。

 

【参考文献】
da Costa RC, De Decker S, Lewis MJ, Volk H; Canine Spinal Cord Injury Consortium (CANSORT-SCI). Diagnostic Imaging in Intervertebral Disc Disease. Front Vet Sci. 2020 Oct 22;7:588338. doi: 10.3389/fvets.2020.588338. PMID: 33195623; PMCID: PMC7642913.

 

De Decker S, Warner AS, Volk HA. Prevalence and breed predisposition for thoracolumbar intervertebral disc disease in cats. J Feline Med Surg. 2017 Apr;19(4):419-423. doi: 10.1177/1098612X16630358. Epub 2016 Jul 9. PMID: 26868632.

 

 

※当院では、高崎市の「MGL付属高度動物医療センター」にてMRI検査を実施しております。当院からの指示があった場合を除き、まずは富岡総合医療センターをご受診下さい。