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2023.11.15
画像診断
#20 椎間板脊椎炎【画像診断】

<症例> ボーダーコリー、5歳、未去勢雄、18kg

 

数週間程前からどこか痛がるような様子があり、少し様子を見ていたら数日前からふらつくようになってきたとのことで来院されました。
身体検査を行ったところ、腰部に圧痛が認められ、精査のためにMRI検査を実施しました。

 

MRI検査を実施したところ、第3腰椎、第4腰椎、及び椎間板がT2強調画像/STIR画像*で高信号(白い部分:黄緑矢頭)を呈しており、炎症が疑われました。造影剤投与後の画像では、病変部が造影剤により増強され、白く見えています。これらの所見から、椎間板脊椎炎が疑われました。

 

【MRI、腰部矢状断像、T2強調画像】
【MRI、腰部矢状断像、T2強調画像】
【MRI、腰部矢状断像、STIR画像】
【MRI、腰部矢状断像、STIR画像】

 

【MRI、L3病変部横断像、T2強調画像】
【MRI、L3病変部横断像、T2強調画像】
【MRI、腰部矢状断像、造影T1強調画像】
【MRI、腰部矢状断像、造影T1強調画像】

 

【MRI、L3病変部横断像、T1強調画像】
【MRI、L3病変部横断像、T1強調画像】
【MRI、L3病変部横断像、造影T1強調画像】
【MRI、L3病変部横断像、造影T1強調画像】

 

【CT、L3病変部横断像、骨条件】
【CT、L3病変部横断像、骨条件】
【CT、L3病変部横断像、軟部組織条件】
【CT、L3病変部横断像、軟部組織条件】

 

病変部のCT画像を見てみると、水色矢印の部分で病変部の椎体(L3)が感染により融解していることもわかりました。感染初期では見られませんが、本症例は数週間前から疼痛があったとのことなので、椎体の炎症が進行して、骨の融解が進んだと考えられます。また、骨の融解により、椎体の左側の筋肉にも炎症が波及している様子もありました(黄矢頭)。
幸い、今回は脊髄への影響は見られませんでしたが、このまま放置しておくと、椎体の融解がさらに進み、病的骨折を起こしていた可能性もありました。

 

椎間板脊椎炎は膀胱炎、歯肉炎や皮膚炎などの離れた場所から感染が波及すると言われており、本症例は膀胱炎も併発していたことから、膀胱炎からの二次的な感染が疑われました。
やはり早期診断早期治療が一番ですので、何か気になることがありましたら、いつでもご相談ください。(椎間板脊椎炎に関しては、【画像診断】#14もご参照下さい。)

 

*STIR法は非選択的脂肪抑制法(short-tau or short TI inversion recovery)という脂肪抑制画像の一種(他にCHESS法、WFS法など)のことで、簡単に説明すると脂肪を抑制することによって、脂肪の中や近くにある病変などをわかりやすくします。脂肪はT2強調画像やT1強調画像といった、主な撮像法のどちらでも白く見えてきます。他にT2強調画像で白く見えてくるものには、液体の他、炎症や浮腫、腫瘍といった病変が白く見えてきます。そのため、通常であれば白く見える脂肪を黒く表示させることによって本当に見たい病変を目立たせることができます。

 

  
 
  

 

上記3枚の画像を比べると、T2強調画像、T1強調画像では、背中の脂肪や、腹腔内の脂肪が白く見えていますが、STIR画像ではそれらの脂肪が抑制されており、膀胱内の尿や脳脊髄液、椎間板の髄核など液体成分を多く含むものが白く際立って見えています。本症例でもSTIR画像が有用であった理由に、椎体は脂肪髄と言い、脂肪を含むことにより、椎体の一部が白く見えてくることがあります(一般的には加齢に伴う変化)。そのため、T2強調画像のみで椎体が白いからと言って必ずしも炎症と言い切ることはできません。

 

 

この症例は背部の筋肉に炎症(黄丸)が認められた別の症例ですが、T2強調画像(T2WI)で椎体の背側が少し白くなっているところがありますが、筋肉にももちろん脂肪は含まれるため、この撮像法/断面のみでは確定はできませんが、STIR法など他の撮像法を組み合わせることによって細かな病変の見落としを防いだり、より正確な診断を行うことが可能となります。

 

 

※当院では、高崎市の「MGL付属高度動物医療センター」にてMRI検査を実施しております。当院からの指示があった場合を除き、まずは富岡総合医療センターをご受診下さい。