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2023.10.20
画像診断
#2 胸腰部椎間板ヘルニア(I型)【画像診断】

<症例> ミニチュアダックスフンド、10歳、去勢雄、5.6kg

 

本日ソファから飛び降りた後、突然キャンと行って、その後から後肢を引きずるようになってしまったとのことで来院。
神経学的検査を行ったところ、後肢の麻痺が認められ、特に右後肢の方が麻痺の程度が強いことがわかりました。
神経学的検査より、胸腰部の椎間板ヘルニアが疑われたため、MRI検査を実施しました。

 

MRI検査を実施したところ、椎間板ヘルニアが2箇所認められました。1つは、第11胸椎と第12胸椎の椎間(T11-12)で、飛び出た椎間板物質が脊髄を右側からかなり重度に圧迫していました(橙矢頭)。もう1つは、第13胸椎と第1腰椎の椎間(T13-L1)で、脊髄が椎間板物質により腹側から軽度に圧迫されていました(黄矢頭)。本症例は椎間板ヘルニアが2箇所認められましたが、症状と圧迫の程度から、T11-12の椎間板ヘルニアが今回の主病変であると診断されました。

 

【MR画像、胸腰部矢状断像】
【MR画像、胸腰部矢状断像】
【MR画像、矢状断像、正常例】
【MR画像、矢状断像、正常例】

 

【MR画像、横断像(T11-12)】
【MR画像、横断像(T11-12)】
【MR画像、横断像(T13-L1)】
【MR画像、横断像(T13-L1)】

 

T11-12とT13-L1の横断像を見比べると、脊髄の圧迫のレベルがかなり違うことがわかります。T11-12では、脊髄が重度に潰されて左下に追いやれています(橙矢頭)。このレベルの圧迫だと麻痺の程度も強くなり、基本的にはHansenI型と分類されるタイプのヘルニアです。そして、T13-L1では脊髄の直下から盛り上がった椎間板が脊髄を圧迫していますが(橙矢頭)、T11-12と比べても脊髄の形態は比較的確認できるため、圧迫は軽度であると考え、強い麻痺を起こすようなレベルの椎間板ヘルニアではないとも考えられます。また、こういった形態を呈する椎間板ヘルニアはHansen II型と呼ばれるタイプが多いです。

 

正常な椎間板は中心部に水分を多く含むため、矢状断像のT2強調画像と呼ばれる画像では白く見えるのでよくわかります(右上の画像:矢状断像、正常例)。しかし、高齢になるにつれて(もしくはダックスフンドのような軟骨異栄養犬種と言われる犬種では比較的若齢から)、徐々に水分含有量が減り、T2強調画像で徐々に黒くなっていきます。そして、変性した椎間板で、より椎間板ヘルニアが起こりやすくなります。少し細かいですが、矢状断像で、T11-12とT13-L1の椎間板の画像を見比べると、T11-12の椎間板の方がより黒く(低信号)見え、椎間板の変性の度合いがより高いという所見になり、今回歩けなくなってしまった原因となっている椎間板ヘルニアを探す際のポイントの一つとなります。

 

*当院では、高崎市の「MGL付属高度動物医療センター」にてMRI検査を実施しております。
当院からの指示があった場合を除き、まずは富岡総合医療センターをご受診下さい。