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2023.11.05
画像診断
#14 椎間板脊椎炎【画像診断】

<症例> ウェルシュ・コーギー、10歳、去勢雄

 

数ヶ月前からの進行性の後肢不全麻痺が認められ、MRI検査を実施。

 

MRI検査を実施したところ、第13胸椎と第1腰椎(T13-L1)の椎間板及び椎体終板(椎体と椎間板の間にある軟骨)に、T2強調画像で不均一に高信号(周囲より白い部分:黄緑丸)、T1強調画像で低〜等信号(周囲より少し黒い部分:黄緑丸)を呈する病変を認めました。この病変は造影剤による増強効果を認め、周囲より白く見えるのがわかります(周囲より白い部分:黄緑丸)。これら画像所見より、T13-L1の椎間板脊椎炎が疑われました。同様に第11胸椎と第12胸椎(T11-12)の椎間板及び椎体終板にも異常が認められましたが、T13-L1の所見と少し見え方が異なり、T2強調画像で低信号(周囲よりも黒い:骨硬化を示唆)を呈し、造影剤による増強効果を認めませんでした(黄丸)。このことから、T11-12及びT13-L1どちらも椎間板脊椎炎が疑われましたが、T11-12に関しては慢性的であり、陳旧化を疑うような所見を呈し、T13-L1に関してはやや慢性的かつ活動性病変であると考えられました。なお、これら椎間(T11-12、T13-L1)直上を走行する脊髄への影響(圧迫)は認められませんでした。

 

【MRI、胸腰部矢状断像、T2強調画像】
【MRI、胸腰部矢状断像、T2強調画像】
【MRI、胸腰部矢状断像、T2強調画像】
【MRI、胸腰部矢状断像、T2強調画像】

 

【MRI、胸腰部矢状断像、T1強調画像】
【MRI、胸腰部矢状断像、T1強調画像】
【MRI、胸腰部矢状断像、造影T1強調画像】
【MRI、胸腰部矢状断像、造影T1強調画像】

 

【MRI、L1-2横断像、T2強調画像】
【MRI、L1-2横断像、T2強調画像】
【MRI、L4-5横断像、T2強調画像】
【MRI、L4-5横断像、T2強調画像】

 

本症例は椎間板脊椎炎を疑う所見の他に、多発性に椎間板ヘルニアが認められました(黄矢頭)。いずれも脊髄圧迫の程度は軽度ではありましたが、神経根を圧迫している部位(L1-2横断像)も複数認められ、これらが痛みの原因や麻痺の原因となっている可能性も考えられました。また、慢性的かつ進行性に麻痺の症状が出る疾患として、本症例の犬種も含めて考えると、変性性脊髄症(degenerative myelopathy:DM)も鑑別疾患として考えられましたが、変性性脊髄症はMRI上、異常が検出されないことが多く、遺伝子検査と併せた評価が必要となってきます。

 

<椎間板脊椎炎 discospondylitis>
椎間板脊椎炎は椎間板及び椎体終板に細菌や真菌が感染し、炎症を起こす疾患のことを言います。膀胱炎、前立腺炎、歯肉炎、皮膚炎などの、脊髄から離れた部位での感染が血行性に椎間板に波及し、感染するといわれています。主な症状は感染を起こした椎間周囲の疼痛であり、同時に複数箇所で感染を起こすこともあります。悪化すると、二次的に膿瘍を形成したり、髄膜炎、筋炎を併発することもあります。また、炎症に伴う骨の増殖や融解による脱臼/骨折などにより、脊髄や神経根を圧迫した場合には麻痺の症状が出ることもあります。
症状が椎間板ヘルニアとよく似ているため、画像検査や血液検査をもとに診断する必要があります。

 

*当院では、高崎市の「MGL付属高度動物医療センター」にてMRI検査を実施しております。
当院からの指示があった場合を除き、まずは富岡総合医療センターをご受診下さい。