case

診療実績

TOP > #13 脊髄腫瘍(悪性末梢神経鞘腫瘍:MPNST)【画像診断】
2023.11.04
画像診断
#13 脊髄腫瘍(悪性末梢神経鞘腫瘍:MPNST)【画像診断】

<症例> ミニチュアシュナウザー、9歳、避妊雌、8.9kg

 

1-2か月前からなんとなく足腰が弱ってきているような様子があったが、最近になって前肢にも力が入りにくいような様子があり、元気もなくなってきたとのことで来院。
神経学的検査を行ったところ、四肢の不全麻痺が認められました。
レントゲン上は明らかな異常はなく、精査のためにMRI検査を実施しました。

 

MRI検査を実施したところ、脊柱管内のかなり広範囲に明瞭に造影増強される病変が認められました(赤矢頭)。主に胸髄で病変が顕著に見られており、ひどいところでは脊柱管内のほぼ全域を占め、正常な脊髄を確認できない領域もありました。本症例はあまりに広範囲に病変が見られており、かつ、病変が髄内に発生しているように見えるところもあれば、髄外のように見えるところもあり、神経膠腫や悪性末梢神経鞘腫瘍、独立円形腫瘍(リンパ腫や組織球肉腫)などの複数の腫瘍が鑑別として考えられましたが、最終的な病理検査の結果は悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)でした。

 

【MRI、頚胸部矢状断像、造影T1強調画像】
【MRI、頚胸部矢状断像、造影T1強調画像】
【MRI、胸腰部矢状断像、造影T1強調画像】
【MRI、胸腰部矢状断像、造影T1強調画像】

 

【MRI、横断像(C7)、造影T1強調画像】
【MRI、横断像(C7)、造影T1強調画像】
【MRI、横断像(T7)、造影T1強調画像】
【MRI、横断像(T7)、造影T1強調画像】

 

【MRI、胸部背断像、脂肪抑制造影T1強調画像】
【MRI、胸部背断像、脂肪抑制造影T1強調画像】

 

一般的な悪性末梢神経鞘腫瘍(Malignant Peripheral nerve sheath tumors:MPNST)は末梢神経由来の腫瘍であるため、脊柱管内でこの腫瘍が認められる場合には、いずれかの神経を伝って脊柱管内へ入り込む様子が画像上見えてくることがほとんどです。しかしこの症例はかなり悪性度か高いのか、脊柱管内のかなり広範囲に見られ、かつ、どこが起源となっているのか画像上判別ができないタイプのものでした。

 

一般的な末梢神経鞘腫瘍は、尾側頚神経〜前胸神経、腕神経叢と言われる領域の神経から発生することが多いため、病変側の前肢の跛行やナックリング(足の甲や爪を地面に擦りつける様子)、時に挙上が見られることが多いです。また、腫瘍に神経が侵されることにより、その神経が支配している領域の筋肉が顕著に萎縮してくるのも特徴です。

 

*当院では、高崎市の「MGL付属高度動物医療センター」にてMRI検査を実施しております。
当院からの指示があった場合を除き、まずは富岡総合医療センターをご受診下さい。