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2023.11.01
画像診断
#10 椎間板ヘルニア(外傷後の急性非圧迫性髄核逸脱:ANNPE)【画像診断】

<症例> 雑種猫、13歳、避妊雌、3.2kg

 

数日前にキャットタワーから飛び降りた際に着地に失敗し、その後から徐々に後肢に力が入りにくくなり、引きずりがちになってきたとのことで来院されました。
神経学的検査を行ったところ、両後肢の不全麻痺が認められました。
外傷も疑われたため、レントゲン検査を実施しましたが、脊椎から後肢かけて骨折などの明らかな異常は認められませんでした。
そのため、精査のために胸腰部MRI検査を実施しました。

 

MRI検査を実施したところ、第4腰椎と5腰椎の椎間(L4-5)の直上の脊髄からやや尾側にかけて、T2強調画像で高信号(白い)を呈する病変が認められました。L4-5のT2強調画像横断像では、脊髄がびまん性に高信号を呈しており、浮腫や炎症が疑われ、T2*強調画像から、出血の可能性も否定されました。脊髄の周囲に脊髄に影響を与えるような物質は認められませんでしたが、本症例のL4-5椎間板は他の椎間板に比べてやや低信号(黒い)を呈していたことから、椎間板の変性が疑われ、椎間板の容量もやや減少していました。そのことから、本症例は、経過や症状とも併せ、L4-5で椎間板ヘルニアが起こり、その直上にある脊髄が損傷を受けたが、飛び出た圧迫物質自体は消滅もしくは再吸収されていて見えていない、すなわち、急性非圧迫性髄核逸脱(ANNPE)であると考えられました。

※急性非圧迫性髄核逸脱(ANNPE)については#6をご参照ください。

 

【MRI、腰部矢状断像、T2強調画像】
【MRI、腰部矢状断像、T2強調画像】
【MRI、腰部矢状断像、MRミエログラフィー】
【MRI、腰部矢状断像、MRミエログラフィー】

 

【MRI、L4-5横断像、T2強調画像】
【MRI、L4-5横断像、T2強調画像】
【MRI、L4-5横断像、T2*強調画像】
【MRI、L4-5横断像、T2*強調画像】

 

MRミエログラフィーの画像を見ると、病変がある部位(黄矢頭)の上下の脳脊髄液の白いラインが完全に途絶えてしまっていることがわかります。もともと脊髄の周囲及び中心を脳脊髄液という液体が流れており、正常であれば、矢状断像で上下に白いラインが真っ直ぐ走っているのが見えます。しかし、本症例において脳脊髄液のラインが途絶えてしまっているため、病変部の脊髄が腫脹していると考えられました。

 

MRミエログラフィーは、レントゲンやCTで脊髄造影を実施した時のように、脳脊髄液にポイントを絞って見ることのできる撮像方法の一つです。レントゲンやCTでミエログラフィー(脊髄造影)を実施する際には、くも膜下腔へ直接針を刺して、造影剤を注入し、X線を使用して撮影するため、比較的侵襲性の高い検査となっていますが、MRミエログラフィーという撮像方法を使用することによって、体への負担は最小限にして、脊柱管内の情報を得ることができます。

 

*当院では、高崎市の「MGL付属高度動物医療センター」にてMRI検査を実施しております。
当院からの指示があった場合を除き、まずは富岡総合医療センターをご受診下さい。