<症例> ミニチュアダックスフンド、6歳、避妊雌、5kg
昨日から頚部を痛がり、その後突然立てなくなったとのことで来院。
神経学的検査を行ったところ、四肢の不全麻痺が認められました。
神経学的検査及びレントゲン検査上、第3頚椎と第4頚椎の椎間(C3-4)での椎間板ヘルニアが疑われたため(レントゲン画像:黄色丸)、確定診断のために頚部MRI検査を実施しました。
MRI検査を実施したところ、C3-4で椎間板物質が脊髄を右下から圧迫し、脊髄が扁平な形になっている事が確認されました(MR画像:黄矢頭)。脊髄圧迫の見られた場所はこの1箇所であり、症状が急性に発症したこと及びMR画像所見から、I型の椎間板ヘルニアと診断されました。
病変部のMR画像・横断像と比べると、正常な脊髄のMR画像・横断像は、突出した椎間板物質によって圧迫されていることがわかります。
<椎間板ヘルニア>
椎間板ヘルニアとは、椎間板が正常な位置から飛び出すことをいいます。一般的には背中側へ突出し、椎間板のすぐ上を走行する脊髄を圧迫することによって神経症状を引き起こします。
椎間板ヘルニアは大きくHansenI型とHansen II型に分類されます。I型はミニチュアダックスフンドなどの軟骨異栄養犬種において比較的若齢で突然発症することが多く、II型は様々な犬種で慢性に症状が悪化することが多いです。
なお、椎間板ヘルニアは、ヘルニアが生じた部位や脊髄圧迫の程度などによって、症状が変わってきます。圧迫が軽度であればヘルニアが生じた部位の痛みのみの事もあります。圧迫の程度が強ければ強いほど、麻痺(不全麻痺〜完全麻痺)の症状が出ます。また、簡単にいうと、頚部の椎間板ヘルニアであれば、前肢後肢のどちらにも麻痺の症状が出て、胸腰部の椎間板ヘルニアであれば後肢のみの麻痺を引き起こします。本症例は前肢にも麻痺の症状が出ていため、神経学的にも頚部の脊髄疾患を疑うことができました。
また、本症例はたまたまレントゲン検査で、椎間板ヘルニアを疑う所見がありましたが、一般的な単純レントゲン検査では、椎間板ヘルニアの診断はできません。造影CT検査でも診断は可能ですが、MRI検査が最も脊髄の評価に優れた検査となります。そのため、椎間板ヘルニアの検査にはMRI検査が推奨されます。
*当院では、高崎市の「MGL付属高度動物医療センター」にてMRI検査を実施しております。
当院からの指示があった場合を除き、まずは富岡総合医療センターをご受診下さい。