foreign body ingestion

異物誤食(おもちゃ・骨・紐など)

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異物誤食とは

犬や猫は、私たち人間が想像もしないものを口にしてしまうことがあります。遊んでいたおもちゃの破片や、テーブルに置かれた食べ物、落ちていた小さなゴミや紐など、家庭内には誤食の原因となるものが数多く潜んでいます。こうした「異物誤食」は動物病院の夜間診療において非常に多く見られる症例のひとつです。

異物誤食は単なる消化不良では済まないケースが多く、消化管閉塞や穿孔、重篤な中毒など命に関わる状態に発展することも少なくありません。特に夜間は飼い主様が不安を抱えながらも判断に迷いやすい時間帯ですが、一刻を争う処置が必要になる可能性がある疾患であることを理解していただくことが重要です。

よくある誤食の種類

中毒性物質

チョコレート・コーヒー・ココア

犬や猫にとって有毒な「テオブロミン」や「カフェイン」が含まれており、嘔吐、落ち着きのなさ、頻脈、不整脈、痙攣などを引き起こします。夜間に摂取した場合は朝まで待たず、すぐに受診が必要です。

ネギ類(タマネギ、ニンニク、長ネギ、ニラなど)

赤血球を破壊して急性の貧血を起こします。摂取量が少なくても危険性が高く、特に猫や小型犬では重症化しやすいため、夜間診療でも対応が求められる代表的な中毒です。

ブドウ・レーズン

原因物質は特定されていませんが、急性腎不全を引き起こすことがあり、数時間~数日後に命に関わる状態に陥ることもあります。夜間に誤食に気づいた場合は即時受診が推奨されます。

キシリトール(ガムやお菓子に含まれる甘味料)

急激な低血糖や肝障害を起こします。ふらつきやけいれんが夜間に突然現れることがあり、早急な血糖値管理が必要です。

植物(特にユリ科)

猫がユリの花粉や花瓶の水を舐めただけでも急性腎不全を起こす危険性があり、夜間診療でも注意が必要です。また、犬は散歩中に公園や道端の草を食べてしまい、消化器症状やアレルギー症状を引き起こすことがあります。さらに、季節によってはチューリップやスイセンなど、一部の花が中毒症状を示す原因となるため注意が必要です。

アルコール・タバコ・薬品類

人用の薬剤やアルコール、ニコチンなどは、体格の小さな犬猫にとって極めて危険です。パッケージや残りを持参いただけると診断・治療に大きく役立ちます。

機械性異物(消化管を詰まらせるもの)

おもちゃ・骨・布・紐・靴下・ビニール袋など

胃や腸に詰まり、嘔吐や腹痛を引き起こします。特に紐状の異物は腸を切り裂くように動くため、穿孔や壊死につながる危険が高いです。

串や針などの先端が鋭いもの

焼き鳥の串や縫い針、画鋲など、尖った異物を誤って飲み込んだ場合、消化管の壁に突き刺さり穿孔や出血を起こすリスクが非常に高いです。夜間に急変することが多く、内視鏡または外科手術による迅速な除去が必要となります。

食道内異物

小さなおやつやガム、果物の芯などが食道に詰まると、よだれを垂らし続けたり、吐きたくても吐けない状態が続きます。夜間に呼吸困難や強い不快感を示すケースもあり、早期の内視鏡処置が必要です。

胃内異物

誤食直後は元気そうに見えても、数時間後に嘔吐や食欲不振、落ち着きのなさが現れることがあります。催吐処置や内視鏡による摘出が必要になることも多く、放置すると腸へ移行し、さらに危険度が増します。

小腸内異物(腸閉塞)

異物が腸に詰まると、繰り返す嘔吐、腹部膨満、強い腹痛などの症状が出ます。自然に排出される可能性は低く、多くの場合は外科手術が必要です。夜間でも緊急対応を要するケースが多く、迅速な診断と治療が命を救います。

人の食べ物による急変

人間の食べ物には、動物にとって危険なものが多く含まれています。特に 脂質の多い食べ物や塩分の多い食べ物は注意が必要です。体の小さな犬や猫にとっては、少量でも過剰な脂質や塩分が負担となり、嘔吐や下痢、急性膵炎の原因になることがあります。
急性膵炎は繰り返す嘔吐・下痢や強い腹痛を伴い、夜間に急激に悪化してショック状態に至ることもあり、非常に危険です。

主な症状

異物誤食をした際に見られる症状は次の通りです。

  • 繰り返し吐く、吐き気が続く
  • いつもと様子が違う、違和感がある
  • 食欲の低下や元気消失
  • 下痢や血便
  • 腹部の張りや痛みを訴える動作
  • よだれが止まらない
  • けいれんやふらつき(中毒の場合)

これらは夜間に突然起こることも多く、「朝まで様子を見よう」では取り返しのつかない事態になることがあります。

診断と治療の流れ

1. 問診

何をどのくらい、いつ食べたのか、確実に食べてしまったかどうかを確認します。可能であれば現物やパッケージをご持参ください。

2. 画像検査

レントゲンやエコーで異物の位置や大きさを確認します。画像検査で異物の有無の確認、血液検査や身体検査、血圧で現在の状態や中毒症状の確認をします。

3. 治療方針の決定

  • 接種直後で催吐可能と判断した場合、催吐処置を試みます。
  • 胃内にある場合は内視鏡で摘出します。
  • 腸閉塞や穿孔のリスクがある場合は外科手術が必要です。
  • 状況によっては入院での治療が必要になる可能性があります。

治療の選択肢は時間経過や誤食したものによって大きく変わるため、できるだけ早い受診が予後を左右します。

夜間診療の重要性

夜間はかかりつけの動物病院が閉まっていることが多く、飼い主様が不安を抱えたまま朝まで待ってしまうケースも少なくありません。しかし、異物誤食は「時間との勝負」の病気です。夜間診療に対応できる病院であれば、検査・処置を速やかに行うことができ、大切な命を救う可能性が高まります。

飼い主さまへのお願い

  • 「様子を見れば大丈夫」と自己判断せず、少しでも誤食の可能性があればご相談ください。
  • 何を食べたのかをできるだけ正確に伝えていただくと、治療がスムーズになります。
  • 誤食を防ぐために、食べ物や小物は動物の届かない場所に保管するよう心がけましょう。

夜間診療のご案内

異物誤食は夜間診療で最も多い緊急症例です。症状が軽く見えても、急激に悪化して命に関わることがあります。
当院では夜間診療に対応しており、獣医師が待機して検査・処置を迅速に行える体制を整えています。
「吐き続けている」「元気がない」「誤食したかもしれない」そんな時は迷わずご連絡ください。

0274-64-0854