中毒とは
犬や猫は、人にとっては無害な食べ物や日用品でも、中毒を起こすことがあります。少量であっても体が小さいために重症化することがあり、夜間診療で非常に多く相談を受ける症例のひとつです。
中毒は摂取後数時間で命に関わることもある緊急疾患であり、早期対応が救命の鍵です。夜間に「食べてしまったかも」と気づいたら、様子を見ずにすぐにご相談ください。
犬や猫が中毒を起こす主な原因物質
食べ物による中毒
チョコレート・ココア・コーヒー
テオブロミンやカフェインが原因で、少量でも中毒症状を起こします。嘔吐、下痢、興奮、不整脈、痙攣が見られ、重症例では呼吸不全や死亡に至ることもあります。
ネギ類(玉ねぎ・長ネギ・ニラ・ニンニクなど)
赤血球を壊し、貧血を引き起こします。ネギ類を使用した料理の煮汁などを飲むだけでも症状を引き起こすとされています。摂取後1〜2日後に元気消失や尿の色の変化が見られることがあり、夜間でも早期の診断と治療が必要です。
ブドウ・レーズン
急性腎不全を引き起こすことがあり、原因物質は不明ですが少量でも危険です。嘔吐や元気消失が見られたら、夜間でも受診を急ぎましょう。
キシリトール(ガムやお菓子)
急激な低血糖を起こし、ふらつき、けいれん、意識障害を引き起こすことがあります。猫よりも犬に多く、少量でも危険です。
アルコール・発酵食品
酔いだけでなく低血糖や呼吸抑制を引き起こすことがあります。体重の軽い小型犬や猫は特に注意が必要です。
肝毒性や神経毒性もあり、軽症で消化器毒性、重症ではショックになり亡くなる可能性もあります。
薬剤による中毒
人用の解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン、イブプロフェンなど)
肝不全、腎不全はもちろん、胃腸障害やメトヘモグロビン血症を引き起こすと酸素を細胞に取り込めなくなり死に至ることがあります。
サプリメント・漢方薬
動物にとって有害であることや、過剰摂取による異常が認められることもあります。
農薬・殺鼠剤・防虫剤
重篤な神経症状や出血傾向を示すことがあり、少量でも死に至る可能性があります。
植物による中毒
ユリ科(特に猫で危険)
花粉や花瓶の水を舐めただけでも急性腎不全を引き起こします。夜間でもすぐに対応が必要です。
観葉植物(スズラン、ポインセチア、アロエなど)
胃腸障害や流涎に加えて神経症状を引き起こす可能性もあります。
主な症状
中毒によって現れる症状は原因物質によって異なりますが、以下のような変化が見られます。
- 嘔吐・下痢・よだれの増加
- 食欲不振・元気消失
- 震え・ふらつき・けいれん
- 呼吸が荒い、脈が速い、不整脈
- 意識障害・昏睡
特に、症状が軽く見えても体内では急速に障害が進んでいることがあり、時間が経つほど重症化するため、早期の診察が不可欠です。
診断と治療の流れ
1. 問診
何をどのくらい、いつ摂取したかをできる限り正確に確認します。パッケージや残りの食品・薬剤をお持ちいただくと診断に非常に役立ちます。
2. 身体検査、血液検査、画像検査、神経検査、血圧など
状況に応じて必要な検査を実施します。
3. 治療
状態の安定化を実施しながら、拮抗薬があるものには拮抗薬の投与。また催吐処置や胃洗浄、点滴、解毒剤、活性炭(吸着剤)などを実施します。
重篤な症状の場合検査と並行して治療を実施させていただきます。
※拮抗薬が存在するものでも院内に拮抗薬がない場合もあります。
夜間診療の重要性
中毒は、摂取後の時間との戦いです。
「少しだけ食べた」「まだ元気だから大丈夫」と思って様子を見てしまうと、気づいたときには症状が進行し、治療が難しくなることがあります。
夜間でも対応できる動物病院に早めに相談・受診することで、治療の選択肢が広がり、救命率が大きく向上します。
飼い主さまへのお願い
- 誤食・中毒の疑いがある場合は、できるだけ早く病院へ連絡・来院してください。
- 食べた物のパッケージや残りをお持ちください。治療の判断に不可欠な情報になります。
- 普段から動物の届かない場所に危険物を保管し、事故を防ぎましょう。
夜間診療のご案内
中毒は発症からの時間が治療成績を左右します。少量でも油断せず、夜間でもすぐにご相談ください。
当院では夜間診療に対応し、獣医師が待機して迅速な診断と治療を行っています。