13歳の柴犬の女の子が右後肢の跛行を主訴に来院。実はこの患者さんは、1年前に左後肢の跛行で来院され、前十字靭帯の断裂を診断して手術をしていました。その後左後肢はとても良く運動できるようになっていましたが、今回は右後肢に跛行を認め、検査の結果左後肢と同様に前十字靭帯の断裂が疑われました。飼主様と相談の結果、反対側と同じ手術を右側にも実施することとなりました。
手術は全身麻酔下で実施され、硬膜外麻酔と鎮痛薬を併用し、可能な限り痛みを軽減できるよう努めました。今回は跛行が認められてから比較的早期に来院されたため、前十字靭帯は部分断裂の状態で済んでいました。半月板の損傷もなく、TPLOと呼ばれる骨矯正手術を実施しました。
高齢のわんちゃんでしたが術後も元気に過ごしてくれ、2日で退院できました。術後2週間後にはかなりしっかりと歩行できるようになっており、6週間後にはほぼ正常に運動できるように回復してくれました。
イヌの前十字靭帯疾患は、残念ながら両側に罹患してしまうことがよくあります。報告によって様々ですが片側に前十字靭帯疾患を発症したイヌの20~61%で反対側の肢も罹患したとされています。靭帯が変性してしまう病態である以上、どの犬種でも両側に発症することがありますが、特にラブラドールレトリバーやロトワイラーなどの大型犬で多く、経験的には柴犬も高確率で両側に発症すると感じています。高齢だから手術ができないということはなく、その患者、そのご家族に合った最良の治療を選んでいただけるよう努力しています。
【参照文献】
Guthrie J, Keeley B, Maddock E, et al. Effect of signalment on the presentation of canine patients suffering from cranial cruciate ligament disease. Journal of small animal practice 2012;53:273-277.