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2024.02.07
整形外科
#68 前十字靭帯断裂【整形外科】

11歳のヨークシャーテリアの女の子、右後肢の挙上を主訴に来院されました。右膝関節は腫れており、関節がぐらぐらと不安定になっていました。レントゲン検査、整形学的検査、関節液検査を実施し、前十字靭帯断裂と判断、外科手術に進むこととなりました。
手術は全身麻酔下で行いました。術中、術後の痛みを可能なかぎり軽減するため、当院麻酔科の獣医師とも協力し局所麻酔、鎮痛薬を併用して実施しました。前十字靭帯は完全に断裂しており、半月板も割れてしまっていました。損傷した半月板は部分的に摘出し、TPLO術(前十字靭帯がなくても安定して歩けるように骨矯正する手術)を実施しました。
術後経過もよく3日で退院し、術後4週間ほどでほぼ正常に歩行できるように回復してくれました。ご自宅での管理も徹底してくださり、術後3ヶ月で治療を終了としました。

 

犬の前十字靭帯は膝関節の中心にあり、大腿骨と脛骨を繋いでいます。膝関節の中にあるものの、靭帯周囲には関節包を内張りする滑膜と呼ばれる膜があり、機能解剖学的には関節外とも捉えることができます。この靭帯周囲の滑膜から靭帯に血管が伸び、靭帯を横断しつつ、大腿骨から脛骨に伸びる縦方向の血管とつながります。しかしながら靭帯の中心部分では血流が弱く、この部分から靭帯が脆弱化してくるのではないかと考えられています。靭帯が脆弱化してきた段階では症状はありませんが、一旦損傷が起き始めたり、滑膜炎が起きてきたりすると痛みが出始めます。部分断裂のうちは症状が軽微で一過性のことがありますが、このタイミングで治療に入ることができればより良い予後が期待できます。

 

 

【術前レントゲン】
【術前レントゲン】
【術前レントゲン】
【術前レントゲン】

 

 

【術後レントゲン】
【術後レントゲン】
【術後レントゲン】
【術後レントゲン】

 

【参照文献】
Niebauer GW, Restucci B. Etiopathogenesis of Canine Cruciate Ligament Disease: A Scoping Review. Animals 2023;13:187.