手術は全身麻酔下で実施しました。術中、術後ともに痛みが最小限で済むよう、当院麻酔科の先生が局所麻酔も併用し管理してくれました。
手術は前腕部の橈骨と尺骨という2本の骨のうち、橈骨のみをプレートで固定しました。術後数日で患肢にも体重をかけながら歩くことが可能となり、2ヶ月が経つころには橈骨も尺骨もどちらも完全に骨癒合が認められました。
小型犬、特にトイ犬種では落下事故による骨折で多くの患者さんが来院されます。折れた骨が治癒するには血液供給が重要ですが、特に小型犬種の前腕部や下腿部の骨折の場合、骨の周りの筋肉などの組織が少ないため血流が弱くなります。そのため骨をできるだけ早く、安全に癒合させるには可能な限り周囲の組織を傷つけないよう手術に細心の注意を払う必要があります。ヒトでもよく用いられるPRP(多血小板血漿)などを骨折部に用いることで骨癒合が促進されたという報告などもあり、今後研究が進んでいくかもしれません。
【術前】
【術後】
【参照文献】
López S, Vilar JM, Sopena JJ, et al. Assessment of the efficacy of platelet-rich plasma in the treatment of traumatic canine fractures. International journal of molecular sciences 2019;20:1075.