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2023.06.20
整形外科
#60 前十字靭帯断裂【整形外科】
自宅で遊んでいたところ急に左後肢を痛がりだしたと言う主訴で8歳のチワワの女の子が来院されました。触診にて膝蓋骨(膝のお皿の骨)の内方への脱臼と、ドロワーサイン(大腿骨に対して脛骨が前後方向に動揺すること)を認め、膝蓋骨内方脱臼を伴う前十字靭帯断裂と診断しました。運動機能の回復と将来的な関節疾患の予防には手術が第一選択と考えられ、ご家族と相談の結果手術に進むこととなりました。

 手術前には徹底した術前検査、整形学的検査、レントゲン検査、関節液検査等を実施します。その結果、今回の患者は脛骨高平部(すねの骨の膝関節の部分)の角度が急勾配であり、最も一般的に実施されているTPLOという手術ではなく、CBLOという手術を実施することとしました。また同時に膝蓋骨内方脱臼の整復も行いました。

術後翌日から体調も問題なく、1週間後には手術した足をしっかり使って歩けていました。その後も問題なく回復してくれ、術後3ヶ月で治療終了となりました。

 

 前十字靭帯の断裂は犬でとても一般的に発生します。多くは前十字靭帯の脆弱化に伴う病的な断裂であり、自然に治癒することは期待できません。現在日本でも、TPLOなどの骨の形を変えることで膝関節を安定化させる手術が広く行われています。しかしながら脛骨の形は患者によって異なり、中には特殊な形状をしている場合もあります。その場合には通常のTPLOでは合併症の発生率が高くなることも知られており、それに対処するため様々な手術方法が提唱されています。当院でも多くの術式を取り入れ、それぞれの患者に最善と思われる方法で治療ができるよう研鑽に努めています。

 

【術前レントゲン】

 

【術後レントゲン】

【参照文献】

Schlag AN, Peycke LE, Hulse DA. Center of rotation of angulation‐based leveling osteotomy combined with a coplanar cranial closing wedge ostectomy to manage cranial cruciate ligament insufficiency in dogs with excessive tibial plateau angle. Veterinary Surgery 2020;49:1125-1131.