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2023.05.24
整形外科
#59 両側膝蓋骨外方脱臼【整形外科】
歩き方の異常と、長時間歩けないことを主訴に1歳の柴犬のわんちゃんが来院されました。来院された時点で明らかに歩様異常があり、触診、整形学的検査、レントゲン検査の結果、両後肢の膝蓋骨外方脱臼によるものと考えられました。また同時に前肢にも軽度の跛行を認めており、こちらは両肩関節の不安定症(関節の靭帯が弛緩している病気)と考えられました。飼主様と相談の結果、まず問題となっている後肢の膝蓋骨脱臼から治療していくこととなりました。

手術は片側ずつ、2回に分けて行いました。まずは左後肢から、膝蓋骨がはまっている大腿骨の溝(滑車溝)を深くする手術、膝蓋靭帯の付け根の位置を矯正する手術(脛骨粗面転移術)、周囲の筋肉などを調整する手術(内側支帯解放、外側関節包縫縮)を行い、さらに糸で膝蓋骨が再脱臼しないよう引っ張る方法(膝蓋骨制動術)も併用しました。術後1ヶ月で順調に回復してくれたため、今度は右後肢に対して同様の手術を行いました。

右後肢の術後から3ヶ月が経過し、両後肢とも問題なく回復してくれました。歩き方もとてもきれいに改善してくれ、走ったり、お散歩も長時間できるようになってくれました。Instagramに術前と術後の動画があるため、是非見てみてください。

 

膝蓋骨外方脱臼は内方脱臼に比べると発生頻度は少ないですが、術後の合併症発生率がやや高いことなどが報告されています。またエーラスダンロス症候群などの基礎疾患との関連を示唆する報告もあり、今回のわんちゃんのように複数関節に弛緩症などの異常が認められる場合には注意が必要かもしれません。当院では手術前には全身的な状態の確認を行い、必要であれば他科の専門医とも連携を取りつつ適切な診断、治療ができるよう努めています。

 

【術前画像】

【術後画像】

【歩行動画】

【参照文献】

Aires LPN, de Souza GV, Faria LG, et al. Lateral Patellar Luxation and Ehlers Danlos Syndrome (EDS) in a Dog. Acta Scientiae Veterinariae2022;50.

Kalff S, Butterworth S, Miller A, et al. Lateral patellar luxation in dogs: a retrospective study of 65 dogs. Veterinary and Comparative Orthopaedics and Traumatology 2014;27:130-134.