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2023.02.28
整形外科
#56 前十字靭帯断裂【整形外科】
7歳のポメラニアンの女の子、急性の右後肢の跛行(足を引きずって歩くこと)を主訴にご紹介で来院されました。触診にて右膝関節の疼痛を認め、膝蓋骨(膝のお皿の骨)の脱臼と膝関節の不安定性(大腿骨と脛骨がぐらぐら動揺すること)を認めました。レントゲン検査や整形学的検査、関節液検査も実施し、膝蓋骨内方脱臼を伴う前十字靭帯断裂と診断しました。運動機能の回復と将来的な関節の病気を予防する目的で手術に進むこととなりました。

手術が始まり関節内を詳細に調べると、前十字靭帯は完全に断裂してしまっていました。幸いにも、半月板(膝の中のクッションの役割をしているもの)は正常でした。関節内のクリーニングを行い、TPLO術を実施しました。

TPLOは骨切りも行う比較的侵襲の大きな手術ですが、劇的な運動機能の改善を得ることができます。ただし手術中、手術後の疼痛管理は徹底的に行う必要があります。当院麻酔科の松浦獣医師と協力し、局所麻酔を含む様々な手段を駆使して疼痛管理を行いました。

術後の経過は良好であり、元通りに運動ができるまで回復してくれました。先日、術後3ヶ月が経過して治療終了となりました。

 

 TPLO術は脛骨を骨切りし、角度を変えることで膝関節を安定化させる手術です。骨切り後の骨は専用のインプラント(プレートとスクリュー)で固定します。このインプラントは通常、抜去することはなくそのまま体内に残します。ただし、感染やインプラントの緩みなど問題が起きた場合には抜去が必要になることもあります。TPLO術に伴う手術部位感染の発生率は3~7.9%と報告されていますが、合併症を最小限にするため、手術時には獣医師、看護師全体で滅菌準備、滅菌操作を徹底しています。

 

【術前レントゲン】

【術後レントゲン】

【参照文献】

Thompson A, Bergh M, Wang C, et al. Tibial plateau levelling osteotomy implant removal: a retrospective analysis of 129 cases. Veterinary and Comparative Orthopaedics and Traumatology 2011;24:450-456.