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2023.02.11
整形外科
#55 骨盤骨折【整形外科】
7歳の三毛猫の女の子、ご自宅から脱走したところで自動車との接触事故に遭遇してしまい、夜間救急外来で受診されました。頭部外傷、眼球出血、骨盤骨折と複数箇所に外傷を認め、来院時には意識状態は昏睡、ショック症状を呈していました。当院の救急集中治療医と協力して緊急対応を行い、なんとかショック状態から脱し一命を取り留めることができました。2日間は全身状態の安定化を最優先し、安定した段階で骨盤骨折の手術に進みました。

骨盤も右側と左側どちらも骨折しており、長時間の手術になりました。右側は腸骨と呼ばれる部分で骨折していたためプレートとスクリューで固定、左側は仙腸関節と呼ばれる背骨と骨盤の接続部分で脱臼していたためラグスクリューと抗回転ピンで固定しました。

長時間の手術も当院麻酔科の獣医師がしっかりと状態の管理をしてくれ、乗り切ることができました。

手術前の時点から右後肢は坐骨神経損傷と思われる麻痺症状を認めていたため、骨が治っても足が動かない可能性もありました。しかし幸いにも神経状態も徐々に回復を認め、今では自分で階段を登ったり走ったりできるほどに回復してくれました。

 

骨盤は動物がしっかりと起立し運動するために欠かせない部位です。しかしながら骨盤骨折に至るケースのほとんどは複数箇所で骨折を認め、治療なしでは歩けなくなってしまうことや、致命的な外傷が併発していることも多々あります。また骨盤の周りには重要な神経も走行しているため、腸骨骨折の約70%、仙腸関節脱臼の約30%で神経損傷も認められたと報告されています。今回の患者では当院スタッフ全員と飼い主様ご家族の協力のもと、亡くなる寸前のところから日常生活を元気に送れるところまで回復してくれました。事故を未然に防ぐことが何より重要ですが、有事の際に動物とご家族の力になれるよう研鑽を積んでいきます。

 

【術前レントゲン】

【術後レントゲン】

【参照文献】

Grierson J. Dealing with pelvic fractures in cats. In Practice 2019;41:106-114.