2週間の包帯固定の間、幸いにも再脱臼することなく過ごしてくれ、解除した後も再脱臼なく元通り歩けるようになってくれました。治療終了して現在数ヶ月経過しますが、問題なく運動できているようです。
犬の股関節脱臼は外傷や事故に伴ってしばしば発生しますが、中には特にきっかけがわからない中で起こることもあります。頭背側脱臼であれば、今回のように非観血的に整復し包帯固定する方法はうまくいけば侵襲少なく回復してくれますが、残念ながら40~50%の患者さんで再脱臼すると報告されています。また包帯での固定は筋肉や皮膚にトラブルを起こすことが多いため、頻繁に交換のために通院して頂く必要があります。手術で股関節を固定する方法は、再脱臼率は低い(11%)ことが報告されていますが、手術に伴う合併症のリスクはあります。どちらが絶対的に良いということは現時点では言えず、飼主様に両方のメリット、デメリットをお伝えし、その子や状況に合った選択ができるよう努力しています。
【脱臼時レントゲン】
【整復後レントゲン】
【参照文献】
Demko JL, Sidaway BK, Thieman KM, et al. Toggle rod stabilization for treatment of hip joint luxation in dogs: 62 cases (2000–2005). Journal of the American Veterinary Medical Association 2006;229:984-989.
Schlag AN, Hayes GM, Taylor A, et al. Analysis of outcomes following treatment of craniodorsal hip luxation with closed reduction and Ehmer sling application in dogs. Journal of the American Veterinary Medical Association 2019;254:1436-1440.