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2022.08.09
整形外科
#44 膝蓋骨内方脱臼【整形外科】
4ヶ月前になりますが、膝蓋骨内方脱臼の1歳半のトイプードルさん、後肢を挙上する(ケンケンする)との主訴で来院されました。両後肢ともに膝蓋骨内方脱臼を認め、重症度は4段階中の2(4が一番重症)でした。両後肢とも膝蓋骨が脱臼すると足を挙げたり、体重を支えられない様子が認められ、飼主様と相談の結果、両後肢ともに手術に進むこととなりました。

手術は両後肢ともスタンダードな方法である、膝蓋骨がはまる溝を電動の刃を使って作り直す手術(滑車溝形成術)、膝蓋靭帯の付け根の位置を矯正する手術(脛骨粗面転移術)、周囲の軟部組織を調整する手術(内側支帯解放、外側関節包縫縮)を行いました。

当院麻酔科医の松浦獣医師のもと、局所麻酔も利用して徹底的に疼痛管理を行い、覚醒時も鳴いたりパニックになったりすることもなく落ち着いて目覚めてくれました。

術後翌日から自力で歩行でき、2週間後には見た目では跛行がわからないくらい回復してくれました。先日術後3ヶ月の検診を行い、治療終了となりました。

 

膝蓋骨内方脱臼は犬の関節疾患の中でも比較的割合の多い疾患です。外科的治療が必要な場合もあり、その治療には一般的に上記の滑車溝形成術、脛骨粗面転移術など複数の方法が組み合わされて用いられます。膝蓋骨脱臼整復手術に伴う合併症発生率は13~45%と報告によって様々ですが、大型犬や若齢件で合併症発生率が高いとする報告もあります。当院では合併症リスクや患者ごとに必要な手術を予め詳細にお伝えした上で、最適な選択を飼い主様と決められるよう努めています。

 

【術前画像】

【術後画像】

【参照文献】

Stanke NJ, Stephenson N, Hayashi K. Retrospective risk factor assessment for complication following tibial tuberosity transposition in 137 canine stifles with medial patellar luxation. The Canadian Veterinary Journal 2014;55:349.

Rossanese M, German AJ, Comerford E, et al. Complications following surgical correction of medial patellar luxation in small-to-medium-size dogs. Veterinary and Comparative Orthopaedics and Traumatology 2019;32:332-340.