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2021.04.26
#9 消化管内異物【救急科】
9ヶ月齢のヨークシャーテリアのわんちゃんで、嘔吐と元気食欲低下を主訴に夜間救急外来で来院されました。血液検査ではあまり大きな異常は認めませんでしたが、検査を進めていくと腹部レントゲン検査において消化管内と思われる場所に白い影が認められ、異物による消化管閉塞と判断しました。CT検査において異物は回盲部(小腸と大腸の移行部分)に存在することがわかり、手術による摘出を行うこととなりました。

手術は開腹により行い、消化管を実際に確認していきます。回盲部を確認すると、その中に固い異物が触れ、その手前の腸は異物が通過したことによると思われるダメージで赤く腫れていました。幸いにも消化管は壊死している様子はなかったため、腸を切開し中にある異物を摘出、そして縫合を行い手術は無事終了しました。異物は子供用のおもちゃでした。

手術に際して全身麻酔が必要となりますが、米国獣医麻酔疼痛管理専門医の小田先生管理のもと、徹底した疼痛管理と共に無事に麻酔、手術を終えることができました。

術後の経過もよく、翌日には食欲も回復し、元気に退院してくれました。

 

消化管内異物は犬、猫ともに時折認められる疾患です。特に幼齢、若齢のわんちゃんでの誤食が多く、物により症状も様々です。小型のものであれば症状もなく腸を通過し、便に出て初めて発見されることもあります。しかしながら胃や腸で詰まってしまうと嘔吐や食欲低下などの強い症状が認められます。そのまま治療がされなければ命に関わることもあり、治療を受けた場合でも死亡率は報告により1~17%と幅があります。完全な閉塞ではない場合やレントゲンにうつらない異物の場合は発見が遅れることもしばしばあり、症状が続いた期間が長いほど合併症の発生率が増加するとする報告もあるため、我々獣医師は常にその可能性を考えながら診療にあたります。物によっては薬剤の投与で吐き出させることができる場合もありますし、食道や胃内の異物であれば手術より合併症の少ない内視鏡での摘出が可能な場合もあります。残念ながら内視鏡で摘出できない場合や胃より先の腸で詰まってしまった場合には手術による摘出が必要となり、最も多い閉塞部位は空腸(小腸の一部)であったと報告されています。閉塞した状態で発見が遅れてしまえば腸の部分切除をしなければならない時もあります。症状は突然出ることが多く、急な状態の変化に注意が必要です。

当院では昨年より夜間救急外来を設置し、地域の動物やご家族に少しでも安心して生活して頂けるよう尽力しています。夜間の急な症状やトラブルなど、ご心配な点がございましたらお問い合わせください。

 

レントゲン画像

摘出された異物