10ヶ月のトイプードルのわんちゃんで、落下事故による橈尺骨(前腕の骨)の骨折を認めました。外固定での治療は難しく手術が第一選択と考えられ、飼主様と相談の結果手術に進むこととなりました。
今回は橈骨のかなり遠位(先端の方)で骨折してしまっていたため、プレートやスクリューの設置に使える部分がとても少ない状態でしたが、T字型のチタン製ロッキングプレートを用いて固定することができました。
骨折の整復は比較的侵襲の強い手術となってしまいますが、当院麻酔科の松浦先生は米国獣医麻酔疼痛管理専門医の小田先生から直接指導を受けており、万全の疼痛管理を行い術中、術後の痛みも最小限に無事に手術を終えることができました。術後2日後には患肢を使いはじめてくれました。
小型犬、超小型犬ではこの橈尺骨の骨折が非常に多く、特に遠位1/3を含む領域での骨折が多く認められます。状況により、先端には2本しかスクリューを入れることができない場合もありますが、やはり3本または4本入れた方が特に捻れに対する抵抗力はますとされています。2本のみしか設置できない場合には固定力の強いロッキングシステムを使う、材質を剛性や強度の高いものにする、スクリューの設置箇所を工夫するなどが必要です。当院でもそれぞれの患者で異なる様々な状況に対応するため、プレートやスクリューも可能な限り準備しています。
レントゲン画像
【術前】
【術後】
【参照文献】
Bird G, Glyde M, Hosgood G, et al. Effect of plate type and working length on a synthetic compressed juxta-articular fracture model. VCOT Open2020;3:e119-e128.