1歳の柴犬の男の子で、散歩中にジャンプし着地に失敗、その後から左後肢を痛がっているとのことで来院されました。レントゲン検査にて左脛骨(すねの骨)の骨折を認めました。幸いにも隣の腓骨には骨折を認めませんでしたが、検査の結果外科的治療が必要と判断し、手術に進むこととなりました。
手術は金属プレートを用いて内固定を行いました。性格も元気でよく動くわんちゃんだったため、術後の負荷耐性も踏まえて強固なプレートを選択しました。
米国獣医麻酔疼痛管理専門医である小田先生管理のもと、全身麻酔、疼痛管理を徹底して行い、術中、術後の痛みも最小限に無事に手術を終えることができました。術後3日で接地、歩行が可能となり、現在1ヶ月が経過し運動機能は完全に回復しています。レントゲンでも骨癒合が確認できました。
骨折は主に大きな外力(交通事故、落下事故など)に伴い発生します。小動物では骨折部位と折れ方によりますが、多くは治療に外科手術が必要となります。最も一般的な方法の1つはプレート固定と思われますが、手術が終わってすぐに骨折が治っているわけではありません。年齢により骨折の治癒速度は異なりますが成長期を過ぎた後の骨折では一般的に3〜6ヶ月の癒合期間を要するとされています。また癒合したと思われる骨でも実際には骨密度や生物学的アパタイトの配向は完全に回復していないことがあり、強度は弱い可能性があることも報告されています。骨折治療にはある程度時間がかかることを念頭に、治療についてお伝えさせていただくよう心がけています
レントゲン画像
【術前】
【術後】
【参照文献】
Piermattei DL, Flo GL, DeCamp CE. Brinker, Piermattei, and Flo’s handbook of small animal orthopedics and fracture repair. 4th ed. St. Louis, Mo.: Saunders/Elsevier, 2006.
Ishimoto T, Nakano T, Umakoshi Y, et al. Degree of biological apatite c‐axis orientation rather than bone mineral density controls mechanical function in bone regenerated using recombinant bone morphogenetic protein‐2. Journal of Bone and Mineral Research 2013;28:1170-1179.