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2021.09.01
整形外科
#24 前十字靭帯断裂【整形外科】
先週も前十字靭帯断裂のわんちゃんの手術がありました。

8歳のマルチーズのわんちゃんで、急な跛行(びっこ)を主訴に来院され、右後肢の前十字靭帯損傷が疑われました。不安定性が強く、外科的治療に進むこととなりました。また膝蓋骨内方脱臼も併発していたため、同時に整復することとしました。

当院では小型犬においても、可能な場合には以前ご紹介させて頂いたTPLOという骨矯正手術を第一選択にご提案させて頂いております。しかしながら今回のわんちゃんでは、患肢のレントゲン撮影を行いプランニングする段階で脛骨高平部角度(すねの骨の膝関節部分における平面が長軸に対して傾いている角度)が大きく角変形を伴っていると考えられたため、CBLO( CORA Based Leveling Osteotomy)という別の骨矯正手術を選択しました。

関節内を探索すると、前十字靭帯は完全断裂していました。また半月板も部分的に損傷しており、部分切除が必要でした。関節内をクリーニングした後、滑車溝形成術(膝のお皿がはまっている溝を深くする手術)、CBLOを実施しました。

手術に際しては全身麻酔が必要となり、また関節の手術は痛みも強くなることが多いですが、当院の麻酔医である松浦獣医師により局所麻酔を含む徹底した疼痛管理が行われ、無事に麻酔、手術が終了しました。術後の体調も問題なく回復し、翌日には自力で食事も摂ることができました。3日後には退院し、1週間後の検診時点で足を着き歩くことが可能でした。数ヶ月後には元気に歩けるようになってくれると思います。

 

前十字靭帯断裂は中〜大型犬だけでなく、小型犬においても一般的に認められる整形学的疾患です。以前にもご紹介させて頂いた通り、様々な手術方法があり今もなお議論がなされています。その中で骨矯正手術は比較的成績が良いことが知られており、TPLOやTTAという手術は世界的に広く受け入れられています。しかしながらこれらの手技も絶対的なものではなく、患者の状態や骨の形状に応じて考慮すべき点が多々あります。今回のわんちゃんのように脛骨高平部角度が大きい患者では、TPLO単独での手術は合併症発生リスクが高くなる可能性があることが報告されています。代替手技も多く提唱されていますが、CBLOはその中の1つです。まだTPLOほど世界的にも報告は多くないですが、良好な回復が期待できます。当院ではそれぞれの患者さんの状況に応じて最適と思われる治療を提供できる体制と準備を整えていけるよう努めています。ご不明な点は当院獣医師までご質問ください。

【術前画像】

【術後画像】

 

【参照文献】

1. Duerr FM, Duncan CG, Savicky RS, et al. Comparison of surgical treatment options for cranial cruciate ligament disease in large‐breed dogs with excessive tibial plateau angle. Veterinary Surgery 2008;37:49-62.

2. Frederick SW, Cross AR. Modified cranial closing wedge osteotomy for treatment of cranial cruciate ligament insufficiency in dogs with excessive tibial plateau angles: Technique and complications in 19 cases. Veterinary surgery 2017;46:403-411.

3. Raske M, Hulse D, Beale B, et al. Stabilization of the CORA based leveling osteotomy for treatment of cranial cruciate ligament injury using a bone plate augmented with a headless compression screw. Veterinary Surgery 2013;42:759-764.

4. Kishi EN, Hulse D. Owner evaluation of a cora‐based leveling osteotomy for treatment of cranial cruciate ligament injury in dogs. Veterinary Surgery 2016;45:507-514.