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2021.06.29
整形外科
#19 骨盤骨折【整形外科】
今週は交通事故の患者さんの来院が続きました。

2歳のわんちゃんで、交通事故による骨盤骨折の治療を希望され来院されました。

骨盤は左右で骨折しており、一部は股関節にも骨折線がかかっている状態でした。痛みは強いものの幸い全身状態に異常はなく、明らかな内臓器の損傷なども認めませんでした。

手術は金属製のプレートとスクリューを用いて骨折部位を固定しました。受傷から時間も経過しており難航が予測されましたが、骨の状態は比較的良好であり無事に骨折箇所を整復することができました。

手術に際しては全身麻酔が必要となります。今回は複数箇所を手術する必要がありとても長時間の全身麻酔となり、また痛みもとても強いと予測されるものでしたが、米国獣医麻酔疼痛管理専門医の小田先生管理のもと、局所麻酔と投薬による徹底した疼痛管理と共に無事に麻酔、手術を終えることができました。

術後の体調も問題なく回復し、翌日には食欲も回復してくれました。神経機能も損なうことなく、術後3日で起立できるようになりました。

 

犬や猫における骨盤骨折は、多くの場合交通事故や高所からの落下事故など、強い外力が加わった場合に発生します。そして骨盤骨折の大部分では外科的治療が必要になります。また外傷性に骨盤骨折を認めた患者では、37%で何らかの腹腔内臓器損傷を認めたという報告もあり、骨折だけでなく損傷を受けた臓器に対しても加療が必要なケースが多くあります。状況によっては命に危険が及ぶこともあるため、適切な初期判断及び対応と外科的介入に進むタイミングの判断が求められます。しかしながら一般的に、適切に対応がなされれば生存退院率は比較的良好(約90%)です。ただし、もちろん事故の発生を防ぐことに注力することが大前提です。ご不明な点があれば、当院獣医師までご質問ください。

 

【術前レントゲン】

【術後レントゲン】

 

【参照文献】

1. Hoffberg JE, Koenigshof AM, Guiot LP. Retrospective evaluation of concurrent intra‐abdominal injuries in dogs with traumatic pelvic fractures: 83 cases (2008–2013). Journal of veterinary emergency and critical care 2016;26:288-294.