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2021.06.14
整形外科
#16 橈尺骨骨折【整形外科】
今週は猫ちゃんの橈尺骨骨折の手術がありました。

10歳の猫ちゃんで、交通事故による左橈尺骨(前腕部分)の骨折を認めました。前腕部分には橈骨と尺骨という2本の骨がありますが、両者とも折れてしまっていたため手術に進むこととなりました。

外科的治療の中でもプレートによる内固定(皮膚の中で骨折を固定する方法)や創外固定(皮膚の外で固定する方法)など様々な種類がありますが、術後管理が容易、合併症が少ないという観点から当院では第一選択はプレート固定としています。今回の猫ちゃんも2枚のプレートを用いた内固定法での骨折整復手術を行いました。

高齢の子でしたが、米国獣医麻酔疼痛管理専門医である小田先生の指導のもと、全身麻酔、疼痛管理を徹底して行い、術中、術後の痛みも最小限に無事に手術を終えることができました。整復した骨が癒合するにはまだまだ時間がかかりますが、術後2日後には患肢を使用して歩くことができるようになりました。

 

橈尺骨骨折は一般的に認められる整形外科疾患であり、特に小型犬やトイ犬種で頻繁に発生しますが、時折猫でも認められます。小型犬で内固定による治療を行う場合、原則的には橈骨の固定のみを行い尺骨は固定しないことが多いと思われます。しかしながら猫では犬と骨の形状も異なり、前腕部の可動域も広く体重のかかり方も異なるため、犬よりも術後の合併症が多いことが知られています。近年では、猫では橈骨、尺骨の両方を固定した方が合併症発生率を減らせる可能性が指摘されており、状況によりけりですが当院でも猫の橈尺骨骨折の場合には多くの場合、橈骨尺骨両者の整復及び固定を行なっています。

【術前レントゲン画像】

 

【術後レントゲン画像】

 

【参照文献】

1. Preston TJ, Glyde M, Hosgood G, et al. Dual Bone Fixation: A Biomechanical Comparison of 3 Implant Constructs in a Mid‐Diaphyseal Fracture Model of the Feline Radius and Ulna. Veterinary Surgery 2016;45:289-294.

2. Piermattei DL, Flo GL, DeCamp CE. Brinker, Piermattei, and Flo’s handbook of small animal orthopedics and fracture repair. 4th ed. St. Louis, Mo.: Saunders/Elsevier, 2006.