去勢手術を予定し来院された7ヶ月のキャバリア・キングチャールズ・スパニエルのわんちゃんでしたが、お話を伺うと1、2ヶ月前から右後肢の跛行(びっこ)があるとのことでした。右後肢を後ろに伸ばすと痛みがあり、レントゲンを撮影すると右後肢の大腿骨頭(太ももの骨の股関節部分)の変形が認められたためレッグペルテス病と判断しました。
レッグペルテス病は大腿骨頭壊死症とも呼ばれ、大腿骨頭へ血液を供給する血管が成長期にうまく発達しないまたは退縮してしまうことで先端の骨や軟骨組織に壊死が起こると考えられています。壊死した組織は修復されますが元の骨や軟骨組織には戻らず、弱い組織となります。その結果ダメージを受けやすく、損傷を繰り返すうちに変形していき、また痛みが強くなっていきます。小型犬、特にトイ犬種で多く発生し、片側の足での発生が多いものの10~17%では両側に発症するとされています。発症の原因は完全には解明されていません。ほとんどの患者では1歳以下で痛みによる跛行や挙上などの症状が認められます。
自然に治癒することはなく、保存的治療も提唱されてはいるものの多くは外科手術が適応されます。今回も去勢手術と併せて外科手術に進むこととなりました。手術は大腿骨頭切除術という方法を用い、病気になって痛みを発している大腿骨頭を取り除きました。
手術に伴い全身麻酔が必要となりますが、米国獣医麻酔疼痛管理専門医の小田先生指導のもと、徹底した管理を行い無事に手術を終えることができました。
術後しばらくはリハビリが必要となりますが、数ヶ月後には日常生活を問題なく送れるまで改善することが期待されます。
治療方法には先ほど挙げたように保存的治療と外科的治療があり、保存的治療には運動制限、体重制限、理学療法、東洋医療、再生医療などがあります。対して外科的治療には今回の大腿骨頭切除術の他に、全股関節置換術(人工関節)などの方法があります。治療法についてはまた次回、詳しくお伝えできればと思いますが、悩まれている場合には当院獣医師までご相談ください。
【術前画像】
【術後画像】
【参照文献】
1. Piek C, Hazewinkel H, Wolvekamp W, et al. Long term follow‐up of avascular necrosis of the femoral head in the dog. Journal of small animal practice 1996;37:12-18.
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4. Piermattei DL, Flo GL, DeCamp CE. Brinker, Piermattei, and Flo’s handbook of small animal orthopedics and fracture repair. 4th ed. St. Louis, Mo.: Saunders/Elsevier, 2006.