環椎・軸椎不安定症は第1頸椎(環椎)と第2頸椎(軸椎)の不安定、亜脱臼、脱臼などに関連して脊髄障害を起こす疾患です。頸部痛や神経症状を起こし、頸部椎間板ヘルニアなどと間違われやすい疾患です。症状が重度になる前の早期の治療が将来を左右するため、なるべく早く適切な診断を行うことが非常に重要です
先天性と後天性に分けられます。先天性が多く、環椎と軸椎をつなぐ歯突起やそれに結合する靭帯に異常(低形成、異形成、欠損)があり環椎-軸椎に緩みが生じ、中の脊髄が圧迫されて症状を起こします。
外傷性の骨折などの後天性もありますが稀です。
脊髄が圧迫されることで頸部痛と脊髄障害による神経症状を起こします。
頭を触られるのを嫌がったり抱き上げられるのを嫌がるような軽度の痛みから、悲鳴をあげるような激痛まで様々な痛みを起こします。
神経の障害が強くなるとふらつきや転倒が起こるようになり、進行すると立てなくなることもあり、最悪の場合には死に至る可能性もあります。
成長期に症状を起こすことが多いですが(1歳以下)、不安定が軽度の場合には症状を起こさずに成長し、反復のストレスにより不安定が重症化することで高齢になってから症状を起こすこともあります。
環椎-軸椎の不安定と脊髄の圧迫を画像検査にて確認します。
不安定はレントゲンだけでも診断可能ですが、脊髄の圧迫や神経の障害、他の疾患を除外するためにはMRIやCT(脊髄造影)検査が有効です。
内科治療、外科治療に分けられます。
ケージレスト、ステロイドなどによる消炎治療、ブレースなどによる首の固定など。ただし、これらで不安定が改善することはなく進行する可能性も高いので、若齢で初回の急性発症の場合で手術を望まれない場合にのみ内科治療を選択します。
不安定の関節を外科的に固定して、脊髄の圧迫をなくすことで症状を改善させます。
通常はピン、スクリューと骨セメントによる腹側椎体固定術を行います。
(下側から骨を固定し安定させる方法)
手術に関連した予後が良い因子として以下が報告されています
1:患者が2歳以下である
2:症状が発現して10か月以内に治療を受ける
3:術前に患者が歩行可能
このことからも症状が認められた場合には進行する前に早めに外科治療を行うことが重要と言えます。