鎖肛は肛門(および直腸)の先天的な形成不全を認める疾患です。
肛門の狭窄や完全な欠損を特徴とし、時に結腸などの消化管にも異常を認めることがあります1-3。
肛門が狭窄している型(タイプⅠ)、
肛門部位に膜が残存し閉鎖している型(タイプⅡ)、
肛門が閉鎖しそれより1cm以上手前で直腸が盲端になっている型(タイプⅢ)、
肛門の外観は正常だが骨盤腔内や腹腔内で腸と連続していない型(タイプⅣ)
に分類され、皮膚や尿路、外部生殖器との瘻管形成を伴う場合もあります1。
完全閉鎖している型では出生時より排便困難となり、狭窄のみまたは瘻管を伴う場合には出生後の水様便は排泄できるものの、多くは離乳に伴い排便障害が認められます。
また先天的な発生段階の異常であり、他の先天性疾患を伴うこともしばしば認められます(口蓋裂、臍ヘルニア、泉門開口、尿道下裂、水頭症など)1,2。
外観と身体検査で肛門及び周囲の形成不全を確認します。
また上記分類を判断するためにX線学的検査や直腸造影検査、膣造影検査などを行います。CT検査が判断に有用な場合もあります。
タイプⅠでサイズが適応であればバルーンカテーテルによる拡張処置が可能です1,2,4。
拡張手術が適応でない場合、またはタイプⅡ、Ⅲ、Ⅳであれば外科的に肛門の形成が必要となります1,2。
場合によっては開腹手術も必要となることがあります1。
術後の予後に関する大規模な研究データはありません。
タイプと併発する疾患により予後が大きく変化しますが、外科的に治療をした場合に約80%で長期生存が可能であったと報告されています2。
術後に便失禁などの合併症が続く場合もあります。
数日前からの排便困難を主訴に来院され、身体検査にて肛門の形成不全を確認しました。
本来の肛門の位置より腹側に細い瘻管を認め、そこから液状便をわずかに排出できるのみでした。
X線学的検査と造影検査を行いタイプⅡ鎖肛と診断し、外科的に肛門形成術を行いました。
幼齢動物では手術のための全身麻酔にも大きなリスクが伴いますが、手術完了し覚醒まで問題なく執り行うことができました。
術後の経過も良好であり、手術当日の夜には排便が可能となりました。