病院からのお知らせ

症例情報

症例情報

#57 大腿骨骨折【整形外科】

投稿日:

1歳の柴犬の女の子、自宅から脱走したところを運悪く自動車と接触事故に遭ってしまい、大腿骨骨折と診断されご紹介で来院されました。幸いにも全身状態は安定していましたが、右の大腿骨(太ももの骨)に複雑骨折を認め、手術が必要な状態と判断しました。

手術はプレートを用いて骨を固定する方法で行いました。単純な骨折ではなく遊離骨片を含む複雑骨折であり、さらに若く元気な子であったため、強固な固定を目指して2枚のプレートを用いて固定を行いました。患肢は手術前から内出血でパンパンに腫れ上がっており疼痛も非常に強かったですが、当院麻酔科の獣医師による疼痛管理もあり術後2日後には患肢を使って歩き始めることができるようになりました。術後3ヶ月で骨も完全に癒合し治療終了。特にプレートを抜く必要もなく、元気に運動できるように回復してくれました。

 

小動物の四肢の骨折に対する治療法として主流な方法の1つがプレート固定です。大型小型問わず多くの骨折に適応され、とても安定した治療成果を得ることができます。しかしながら用いるインプラント(プレートやスクリューなどの金属)に関連した合併症が発生する可能性はあり、皮膚炎、冷感過敏症、骨減少症、プレート破綻、スクリューの緩み、変形癒合、癒合不全などが報告されています。中でも骨減少症は、今回のような大腿骨骨折ではあまり問題になることはありませんが、特に小型犬の橈尺骨骨折では問題となることがあり、プレートの下の部分の骨密度が低下していきます。そのまま放置すると再骨折の原因となることもあります。どんなプレートを使ったとしても発生し得るもので、生物学的要因と生体力学的要因の両方が関係しているとされています。明確な予防法はありませんが、可能な限り骨や周囲の組織にダメージを与えないよう手術を行うことが重要です。

 

レントゲン画像

【術前】

【術後】

【参照文献】

Muroi N, Shimada M, Murakami S, et al. A Retrospective Study of Postoperative Development of Implant-Induced Osteoporosis in Radial–Ulnar Fractures in Toy Breed Dogs Treated with Plate Fixation. Veterinary and Comparative Orthopaedics and Traumatology 2021;34:375-385.

 

-症例情報

執筆者:

関連のお知らせ

#22 レッグペルテス病【整形外科】

11ヶ月のわんちゃん、左後肢の跛行で来院されました。患肢は挙上している時間も多く、右後肢に比べ左後肢は筋量も低下していました。整形学的検査、レントゲン検査の結果、左大腿骨頭の骨折を認め、原因としてレッ …

#28 前十字靭帯断裂【整形外科】

5歳のトイプードルのわんちゃんで、急な左後肢の跛行を主訴に来院されました。検査の結果、左後肢は膝蓋骨内方脱臼を伴う前十字靭帯疾患と診断しました。また右後肢にも軽度の膝関節不安定性が認められ、慢性経過の …

#25 膝蓋骨内方脱臼【整形外科】

先週は膝蓋骨内方脱臼のわんちゃんの手術がありました。 2歳のポメラニアンのわんちゃんで、右後肢を時々挙上する(ケンケンする)とのことで来院されました。 右後肢では膝蓋骨(膝のお皿の骨)の内方脱臼を認め …

#39 前十字靭帯断裂【整形外科】

8歳のトイプードルのわんちゃん、以前から右後肢の前十字靭帯部分断裂を診断していましたが、症状が極めて軽かったため保存的に管理していました。今回急に左の後ろ足を痛がり出したとの主訴で来院されました。左後 …

#13 褐色細胞腫【腫瘍外科】

今週はわんちゃんの褐色細胞腫の手術がありました。 褐色細胞腫というのは、副腎にできる腫瘍の1つです。副腎はお腹の中、左右の腎臓の横にそれぞれ1つずつ存在する小さな臓器(通常10mm×5mmくらい)で、 …

さいとう動物病院

さいとう動物病院

年中無休(年末年始を除き)
診察時間:9時~12時/15時~19時
土・日・祝日も診察
群馬県富岡市中高瀬117
0274-64-0854
安中市・高崎市・前橋市・藤岡市・吉井町からもアクセス良好です。
お電話でのお問い合わせ