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#52 膝蓋骨内方脱臼【整形外科】

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7ヶ月齢のボクサーの女の子が、右後肢の歩き方がおかしいという主訴で来院されました。とても元気で遊び盛りでしたが、右後肢は膝が外を向くような歩き方で、跛行も認められました。触診で膝蓋骨(膝のお皿の骨)が内側に外れてしまう膝蓋骨内方脱臼があることがわかりました。手術が必要でしたが、骨がまだ成長中でありすぐには手術できないと判断しました。骨の形態解析を行いつつ成長を待ち、9ヶ月齢で手術に進むこととしました。

幸い大腿骨や脛骨に重度の骨変形はなく、膝蓋骨が収まる大腿骨の溝を深くする手術(滑車溝形成術)と、膝蓋骨が大腿骨の上に乗るよう靭帯の位置を変更する手術(脛骨粗面転移術)、軟部組織の調整とスタンダードな術式で手術は完了しました。大きな犬種だったため、脛骨粗面転移術にはテンションバンドワイヤも併用し固定しました。

術後の経過もよく、歩き方も正常になり元気に歩けるようになってくれました。先日術後3ヶ月の検診を行い、治療終了となりました。

 

膝蓋骨内方脱臼は、犬では特に多い整形外科疾患の1つです。特に若齢時から程度の強い脱臼が認められる場合には、大腿骨や脛骨の変形を伴うことがあります。あまりに変形が強い時には、膝蓋骨脱臼を整復する際に大腿骨や脛骨の矯正手術も必要となる場合があります。しかしながら骨矯正手術は侵襲も大きくなるため、本当に必要なのかどうか慎重な判断が必要です。当院では、必要に応じてCT検査も実施し、骨の詳細な形態解析も行なっています。その結果や症状、ご家族のご意向を踏まえて治療方法を決定していきます。

 

【術前画像】

【術後画像】

 

【参照文献】

Garnoeva RS, Paskalev MD. Post-operative radiographic measures of pelvic limb alignment in dogs with medial patellar luxation after trochlear wedge recession versus trochlear block recession surgery. Veterinary World 2021;14:1504.

 

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