病院からのお知らせ

症例情報

症例情報

#48 股関節脱臼【整形外科】

投稿日:

 1歳のトイプードルの女の子が、遊んでいる途中に転倒した後から急に右の後ろ足を上げて痛がっているとのことで来院されました。右の後ろ足は伸ばせないほど痛みが強く、触診にて股関節脱臼が疑われました。レントゲン検査を行うと、右大腿骨(太ももの骨)の骨頭が頭背側方向に脱臼してしまっていました。治療の選択肢として非観血的整復(麻酔下で外れた股関節を下の位置にはめる方法)と観血的整復(手術で外れた股関節を戻し、切れた靭帯や関節包を再建する方法)がありますが、飼い主様と相談の結果まずは非観血的整復を行うこととなりました。全身麻酔下で外れた股関節を戻し、包帯で足を外れにくいポジションに固定しました。

 2週間の包帯固定の間、幸いにも再脱臼することなく過ごしてくれ、解除した後も再脱臼なく元通り歩けるようになってくれました。治療終了して現在数ヶ月経過しますが、問題なく運動できているようです。

 

 犬の股関節脱臼は外傷や事故に伴ってしばしば発生しますが、中には特にきっかけがわからない中で起こることもあります。頭背側脱臼であれば、今回のように非観血的に整復し包帯固定する方法はうまくいけば侵襲少なく回復してくれますが、残念ながら40~50%の患者さんで再脱臼すると報告されています。また包帯での固定は筋肉や皮膚にトラブルを起こすことが多いため、頻繁に交換のために通院して頂く必要があります。手術で股関節を固定する方法は、再脱臼率は低い(11%)ことが報告されていますが、手術に伴う合併症のリスクはあります。どちらが絶対的に良いということは現時点では言えず、飼主様に両方のメリット、デメリットをお伝えし、その子や状況に合った選択ができるよう努力しています。

 

【脱臼時レントゲン】

【整復後レントゲン】

【参照文献】

Demko JL, Sidaway BK, Thieman KM, et al. Toggle rod stabilization for treatment of hip joint luxation in dogs: 62 cases (2000–2005). Journal of the American Veterinary Medical Association 2006;229:984-989.

Schlag AN, Hayes GM, Taylor A, et al. Analysis of outcomes following treatment of craniodorsal hip luxation with closed reduction and Ehmer sling application in dogs. Journal of the American Veterinary Medical Association 2019;254:1436-1440.

 

-症例情報

執筆者:

関連のお知らせ

#19 骨盤骨折【整形外科】

今週は交通事故の患者さんの来院が続きました。 2歳のわんちゃんで、交通事故による骨盤骨折の治療を希望され来院されました。 骨盤は左右で骨折しており、一部は股関節にも骨折線がかかっている状態でした。痛み …

#54 膝蓋骨内方脱臼(猫)【整形外科】

1歳半のベンガルの猫ちゃんが運動後からの左後肢の跛行を主訴に来院されました。触診、生計学的検査、レントゲン検査の結果、膝蓋骨内方脱臼(膝のお皿が大腿骨の上から横に外れる病気)と診断しました。重症度は4 …

#9 消化管内異物【救急科】

9ヶ月齢のヨークシャーテリアのわんちゃんで、嘔吐と元気食欲低下を主訴に夜間救急外来で来院されました。血液検査ではあまり大きな異常は認めませんでしたが、検査を進めていくと腹部レントゲン検査において消化管 …

#23 鎖肛【軟部外科】

当院には先天性の病気を持ったわんちゃん猫ちゃんも時折来院されます。 今回は1ヶ月齢の秋田犬のわんちゃんで、便が出ない、排便時に痛がるとの主訴で来院されました。本来肛門がある位置に穴がなく、鎖肛と診断し …

#43 脛骨骨折【整形外科】

2ヶ月齢の猫ちゃんが左後肢の跛行を主訴に来院されました。受傷の原因は分かりませんでしたが、左の脛骨および腓骨(スネの骨)が骨折してしまっていました。骨折部位は大きく変位してしまっており、整復手術に進む …

さいとう動物病院

さいとう動物病院

年中無休(年末年始を除き)
診察時間:9時~12時/15時~19時
土・日・祝日も診察
群馬県富岡市中高瀬117
0274-64-0854
安中市・高崎市・前橋市・藤岡市・吉井町からもアクセス良好です。
お電話でのお問い合わせ