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#47 両側前十字靭帯断裂【整形外科】

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左後肢の跛行を主訴に来院された11歳のチワワのわんちゃん。半年以上前から右後肢も痛めていたとのことで、来院時には両後肢共に痛みを認め、歩くのもままならない状況でした。整形学的検査、レントゲン検査等を入念に行った結果、両後肢とも前十字靭帯断裂(大腿骨と脛骨を繋ぐ靱帯のうちの1つが切れてしまう病気)と膝蓋骨内方脱臼(膝のお皿が外れる病気)を合併していることがわかりました。運動機能の回復を目指して外科手術に進むこととなり、飼主様と相談の結果、両後肢同時に手術を行うこととなりました。

体重2kgととても小さな患者さんであり、今回の手術は滑車溝形成術(膝蓋骨がはまる溝を深くして安定させる方法)、脛骨粗面転移術(膝蓋骨と膝蓋骨に繋がっている筋肉、靱帯を結ぶ線が膝の中心にくるよう調整する方法)、関節外法(前十字靭帯の代わりに糸で関節を安定させる方法)を組み合わせて実施しました。

米国獣医麻酔疼痛管理専門医である小田先生の麻酔のもと手術を行い、両後肢共に無事終了することができました。術後の経過も良く、先日術後3ヶ月の検診を終えましたが両後肢とも問題なく元気に歩いたり走ったりできるように回復してくれました。

 

 前十字靭帯疾患と膝蓋骨内方脱臼は犬においてしばしば併発する疾患です。膝蓋骨内方脱臼により膝関節を伸ばす筋肉である大腿四頭筋の配列がずれ、脛骨が内側に捻れることで前十字靭帯に過剰な負荷がかかり、さらに骨関節炎が進むことで膝関節内の酵素的環境が崩れ、前十字靭帯の状態悪化につながるのではないかと言われています。多々議論はありますが、外科手術に進む場合両者に対応できるように手術方法を選択、組み合わせていきます。最近ではTPLOなどの骨矯正手術を含む方法を行うことが増えてきていますが、超小型犬や患者の状態によっては今回のように関節外法と膝蓋骨脱臼整復を組み合わせて行うこともよくあります。それぞれの患者さんに当院でできるベストな選択肢を飼主様と相談し決定できるよう努めています。

 

【術前レントゲン】

【術後レントゲン】

【参照文献】

Owen M, James D, Bruce M, et al. Surgical stabilization of concomitant canine medial patellar luxation and cranial cruciate ligament disease: Effect of fixation method on postoperative complication rate and clinical outcome. Veterinary and Comparative Orthopaedics and Traumatology2017;30:209-218.

 

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