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診療実績

2022.06.28
整形外科
#42 前十字靭帯断裂【整形外科】
14歳のトイプードルのわんちゃん、急に右の後ろ足の跛行を認め来院されました。きっかけは特になかったようですが、来院時には右後肢をほぼ挙上していました。整形学的検査、レントゲン検査、関節液検査を行い、前十字靭帯断裂と診断しました。14歳の患者さんでしたがまだまだ元気であり、痛みのない生活をさせてあげたい、楽しく散歩をさせてあげたいとのご家族の想いから手術に進むことになりました。

前十字靭帯断裂の患者さんが手術に進む場合にはTPLOという手術を行うことが今のところ多いのですが、今回の患者さんは骨の計測をすると脛骨高平部(すねの骨の頂点部分の面)の角度が大きかったため、CBLOという手術を選択しました。前十字靭帯は完全に断裂し、半月板も割れてしまっていました。半月板の処置、CBLO手術を施し終了としました。

高齢のわんちゃんでしたが全身麻酔も問題なく終了し、術後3日で退院できました。

 これから1,2ヶ月かけて、元気に歩けるようになってくれると思います。

 

 これまでにも紹介してきた通り、前十字靭帯断裂に対する手術方法として最も一般的に用いられているのはTPLOという手術です。しかしTPLOが完璧な手術というわけではなく、どの手術が最も優れているのか結論はまだ出ていません(一番は発症を予防できることですが現状手段がありません)。したがって患者の状態、足の骨の形、体重、性格など色々なことを考慮し手術方法を選択する必要があります。今回選択したCBLOという方法は脛骨の機能軸と解剖軸を合わせるように骨矯正を行う手術方法の1つであり、比較的近年考案されたものですが世界的に少しずつ報告が増えてきているため、今後さらに普及していくかもしれません。

 

【術前レントゲン】

【術後レントゲン】

 

【参照文献】

Guénégo L, Vezzoni A, Vezzoni L. Comparison of tibial anatomical-mechanical axis angles and patellar positions between tibial plateau levelling osteotomy (TPLO) and modified cranial closing wedge osteotomy (AMA-based CCWO) for the treatment of cranial cruciate ligament disease in large dogs with tibial plateau slopes greater than 30° and clinically normal Labradors retrievers. BMC Veterinary Research 2021;17:1-13.