皮膚科専門外来のご案内
皮膚のトラブルには、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、脱毛症、膿皮症、マラセチア皮膚炎など、さまざまな病気が関わっています。これらの多くは慢性化しやすく、何度も再発を繰り返す傾向があるため、適切な診断と継続的な管理が重要です。
中には体質や遺伝的な要因が影響しているケースもあり、一時的な治療では改善が難しいこともあります。そのため、長期的な視点で治療を組み立てていく必要があります。
また、皮膚病は見た目の症状が似ていることが多く、複数の疾患が関与している場合もあります。原因を正確に見極めるには、丁寧な問診・診察・検査を積み重ねながら、時間をかけて評価していくことが大切です。
- 「治療を続けているのに、なかなか良くならない」
- 「同じ薬を長く使っていて、本当に大丈夫か不安」
- 「診断名を教えてもらっていない」
- 「他にどんな治療法があるのか知りたい」
そんなお悩みをお持ちの飼い主さまも、どうぞ一度ご相談ください。
当院の皮膚科専門外来の特徴
当院では、皮膚疾患に特化した皮膚科専門外来を設けています。これまで数多くの皮膚トラブルに向き合ってきた獣医師が、わんちゃん・ねこちゃん一頭一頭の状態を丁寧に診察し、的確な診断とオーダーメイドの治療プランをご提案いたします。
皮膚病は見た目だけでなく、ワンちゃん、猫ちゃんの生活の質(QoL)にも深く関わる大切な疾患です。症状の改善はもちろん、「かゆみの悪循環」を断ち、動物たちが毎日を快適に過ごせるようサポートいたします。
現在、他院で治療中の方のセカンドオピニオンも積極的に受け付けております。長引く皮膚病にお困りの方も、まずはお気軽にご相談ください。
ビデオオトスコープ療法のご案内
わんちゃんやねこちゃんが耳をかゆがったり、頭を振るような仕草をしていませんか?
耳の病気は非常に多く見られるトラブルの一つで、慢性化しやすいという特徴があります。
当院では、こうした耳の症状に対して、より正確で効果的な診断と治療を行うために、「ビデオオトスコープ療法(耳道内視鏡治療)」を導入しています。
ビデオオトスコープとは?
ビデオオトスコープは、先端に高精細カメラとライトを備えた医療用の内視鏡です。
耳の奥まで直接映し出しながら、リアルタイムで観察・処置を行うことができます。
従来の耳鏡や目視では確認が難しかった耳道の奥の病変や異物、耳垢の塊、ポリープ、鼓膜の状態まで詳細に確認でき、必要に応じてその場で洗浄や除去が可能です。
特徴とメリット
原因部位を直接確認しながら処置できるため、再発のリスクを減らします。
長期間改善しない耳のトラブルは、耳の奥に原因があることが多く、ビデオオトスコープがとても有効です。
動物に余計な負担をかけず、精密な治療が可能になります。
モニターに映し出される映像を通じて、病状や治療内容をより深くご理解いただけます。
当院の耳科診療について
当院では、耳の病気に対する根本的な治療を目指して、ビデオオトスコープを活用した専門的な診療を行っております。
特に、これまで何度も治療を受けてきたのに改善しない…というような難治性の耳症状でお悩みの飼い主様には、ぜひ一度この治療法をご検討いただきたいと考えています。
ビデオオトスコープで治療できる主な耳の病気
ビデオオトスコープは、耳の奥深くまで直接観察しながら診断・治療ができる内視鏡機器です。以下のような耳のトラブルに対して、特に高い効果を発揮します。
犬や猫の耳の病気で最も多く見られるのが外耳炎です。
初期段階では点耳薬や耳洗浄で改善することが多いものの、炎症を繰り返すことで耳道の奥に硬い耳垢や分泌物が蓄積し、慢性化するケースもあります。
ビデオオトスコープを用いることで、耳道の深部まで正確に洗浄し、薬が届きにくい部位にも確実に処置することが可能です。
草むらなどで遊んだあと、急に耳を気にする仕草を見せた場合、耳の奥に異物(植物の種や昆虫など)が入り込んでいることがあります。
ビデオオトスコープなら、異物の位置や種類をリアルタイムで確認し、安全かつ確実に除去できます。
耳道内にできるポリープ(良性腫瘤)は、耳垢の蓄積や慢性炎症の原因となります。
従来の検査では見落とされやすい小さな病変や腫瘤も、ビデオオトスコープであれば発見しやすく、その場で処置が可能です。
また、必要に応じて組織を採取し、病理検査を行うことで、より詳しい診断につなげることもできます。
炎症が鼓膜の奥(中耳)にまで広がっている場合、中耳炎が疑われます。
ビデオオトスコープでは、鼓膜の状態も鮮明に観察できるため、鼓膜切開や中耳の洗浄vなど、より高度な処置にも対応可能です。
診察日について
ビデオオトスコープを用いた耳科診療は、月に2回の限定診療となります。
診察日は毎月変更されますので、受診をご希望の際は、事前に病院までお問い合わせください。
担当医の紹介
島崎 洋太郎 先⽣ Dr. Shimazaki Yotaro
皮膚病は、すぐに治る病気と、一生付き合っていかなければならない病気が併発していることが多くあります。”とりあえず”の痒み止めや、抗生剤などの対症療法を続けた場合、治療が長期化する事が多く、わんちゃんネコちゃんの体調はもちろん、飼い主様の負担も多くなってきます。できる限り負担のある薬を少なくし、長期的に付き合いやすい治療を心がけています。

よく⾒られる病気
皮膚の病気は、わんちゃんにとってとても身近で、慢性化しやすいものも多く見られます。ここでは、当院でよく診察する代表的な皮膚疾患をご紹介します。
犬アトピー性皮膚炎は、ハウスダストやカビ、花粉、ノミなど、身の回りにあるアレルゲンに対して、体質的に過剰に反応してしまうアレルギー性の皮膚病です。
- 生後6か月~3歳ごろまでに発症することが多い。
- かゆみ、赤み、脱毛、なめ壊し、耳や肉球の炎症などがみられます。
この病気は完治が難しい慢性疾患であるため、治療は「症状をコントロールし、生活の質(QOL)を保つ」ことが目的になります。
治療には、以下のような方法があります:
- 内服薬・外用薬
- 食事療法
- 定期的なシャンプーやスキンケア
- 抗体医薬(新しい注射薬)
- 減感作療法(アレルゲンに体を慣らしていく治療)など
- 緩和療法(サプリメント)
食物アレルギーは、特定の食材に対して免疫が過剰反応し、皮膚のかゆみや消化器症状(下痢・嘔吐など)を引き起こす病気です。
- 牛肉、乳製品、鶏肉、小麦などがよくあるアレルゲンです。
- アトピー性皮膚炎と症状が似ているため、区別が難しいこともあります。
診断には「除去食試験」が重要です。
これはアレルゲンの可能性がある食材をすべて除き、低アレルゲン食に切り替えて症状の改善を確認する方法です。
治療の中心は:
- アレルゲンとなる食材の特定と回避
- 専用の療法食への切り替え
食事を変えるだけで、症状が劇的に改善するケースもあります。
「脱毛症X」は、原因がはっきり特定できない脱毛のことを総称した呼び方です。他にもアロペシアX、毛周期停止、ポメハゲなどと呼ばれることがあります。
特にポメラニアン、トイプードルなどに多く見られます。
- かゆみや炎症はほとんどなく、左右対称に毛が抜けていきます。
- 首回りや体の毛がほとんどなくなることもあります。
原因としては、ホルモンバランスの乱れ、遺伝、毛周期の異常などが考えられていますが、明確には分かっていません。
診断には、甲状腺機能低下症やクッシング症候群などの除外診断が必要です。
治療法もさまざまで:
- ホルモン補充療法
- メラトニンの投与
- サプリメントやスキンケア など
見た目には目立ちますが、命に関わる病気ではありません。
発毛を優先するか、健康を優先するか、飼い主様と相談しながら治療を進めていきます。
膿皮症は、皮膚の表面や毛穴にいる常在菌(ブドウ球菌など)が異常繁殖し、膿疱(うみ)、かさぶた、かゆみ、炎症を引き起こす皮膚感染症です。
- 皮膚がベタつく、赤みがある、においがする、などの症状がよく見られます。
- アトピーや食物アレルギー、ホルモン疾患、免疫力の低下などが関係することも多くあります。
治療には:
- 薬用シャンプーによるスキンケア
- 抗菌薬の外用や内服
- 背後にある基礎疾患のチェック
が重要です。
再発しやすいため、根本的な原因の治療と継続的なケアが欠かせません。
マラセチアは、犬の皮膚や耳にふだんから存在している酵母様真菌(カビの一種)です。
皮脂の分泌が多くなると異常増殖し、皮膚炎を引き起こします。
- ベタつき、赤み、色素沈着、脱毛、耳のにおいやかゆみ などが代表的な症状です。
- シーズー、フレンチブルドッグなどに多く見られます。
背景にある病気(アトピー、ホルモン異常、食物アレルギーなど)によって皮膚環境が悪化し、マラセチアが増殖することが多いため、根本原因の見極めがとても重要です。
治療には:
- 抗真菌薬(内服・外用)
- 抗真菌シャンプー
- 体質改善や基礎疾患の管理
などを組み合わせて行います。