病院からのお知らせ

症例情報

症例情報

#3 前十字靭帯断裂【整形外科】

投稿日:2021年3月15日 更新日:

今週は犬の前十字靭帯断裂患者の手術を行いました。

8歳のトイプードルのわんちゃんで、散歩中に急に右後肢を跛行(びっこ)し始めたとのことで来院されました。検査の結果、前十字靭帯断裂と膝蓋骨内方脱臼を認め、外科手術に進むこととなりました。

手術は前十字靭帯の断裂に対してTPLO(脛骨高平部水平化骨切り術)、膝蓋骨内方脱臼に対して滑車溝造溝術をそれぞれ組み合わせて実施しました。

手術に際して全身麻酔が必要となりますが、今回は米国獣医麻酔疼痛管理専門医の小田先生にもお越し頂き、全身麻酔はもちろん、局所麻酔と投薬による徹底した疼痛管理のもと、無事に手術を終えることができました。手術は骨切り術も含む侵襲性の高いものでしたが、徹底した疼痛管理により術後の痛みも少なく元気に回復してくれました。数ヶ月後には元通り元気に運動ができるようになってくれると思います。

 

前十字靭帯疾患は犬で多くみられる疾患で、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(スネの骨)を繋いでいる前十字靭帯が部分断裂または完全断裂してしまうことで安定性を欠き、膝関節の可動時や負重時に関節がぐらつくことで痛みや不快感が生まれ、跛行(びっこ)が認められます。外傷や激しい運動をきっかけに発症することもありますが、その多くは日常生活の中で発症します。これは、線維の束である前十字靭帯が、少しずつ線維が切れていくことで徐々に脆弱化し、最終的に負荷に耐えられない程弱くなるまたは完全に断裂してしまった段階で重度の跛行を呈することになるためです。靭帯線維が損傷し始めるその根本的な原因は諸説あるものの、現時点でははっきりと解明されていません。すなわち、現段階で発症を予防する確実な方法はなく、基本的には発症してから治療を行うしかない疾患とされています。ただし、部分断裂の時点で発見し、早期に手術に進むことで完全断裂を防げる可能性はあるため、後肢の痛みや異常を感じた際には早めの検査、診断、治療をお勧めします。治療法についてはまた次回、お話させて頂きたいと思います。

【術前】

【術後】

-症例情報

執筆者:

関連のお知らせ

#31 前十字靭帯断裂【整形外科】

今回は8歳のチワワのわんちゃんで、1年前から続く右後肢の跛行を主訴に来院されました。右後肢は下腿部が内旋し、跛行及び間欠的な挙上を認めていました。検査の結果、膝蓋骨内方脱臼を伴う前十字靭帯疾患と診断し …

#53 脛骨遠位成長板骨折【整形外科】

10ヶ月齢の猫ちゃん、ケージの隙間に足が挟まってしまい、暴れた結果右の後ろ足を骨折してしまいました。レントゲン検査にて右脛骨の遠位成長板(骨の端にある、骨を作る部分)の骨折を認めました。外科的整復が必 …

#32 前十字靭帯断裂【整形外科】

8歳のトイプードルのわんちゃん、急性の右後肢の跛行を主訴に来院されました。散歩中に痛め、1週間経過しても改善がないとのことでした。身体検査、レントゲン検査、整形学的検査を行い、右後肢の膝蓋骨(膝のお皿 …

#6 前十字靭帯断裂【整形外科】

今週は前十字靭帯断裂のわんちゃんの手術が続きました。 15歳のわんちゃんで、左後肢を跛行(びっこ)しているとのことで来院されました。身体検査で左膝関節の不安定性(Drawer徴候、Tibial thr …

#44 膝蓋骨内方脱臼【整形外科】

4ヶ月前になりますが、膝蓋骨内方脱臼の1歳半のトイプードルさん、後肢を挙上する(ケンケンする)との主訴で来院されました。両後肢ともに膝蓋骨内方脱臼を認め、重症度は4段階中の2(4が一番重症)でした。両 …

さいとう動物病院

さいとう動物病院

年中無休(年末年始を除き)
診察時間:9時~12時/15時~19時
土・日・祝日も診察
群馬県富岡市中高瀬117
0274-64-0854
安中市・高崎市・前橋市・藤岡市・吉井町からもアクセス良好です。
お電話でのお問い合わせ